音楽と演劇の街・下北沢「個性派古着店」5選

東京屈指の古着街、下北沢。大手の古着チェーン店が並ぶ一方で、大通りを歩くだけでは気づかない、個性的な古着店も多く存在します。雑居ビルの階段を上がってみたり、横道へ入ったり、静かな住宅地の中を進み続けたり……。ふらっと入った店で思いがけない一着に出会うこともあれば、迷いながらやっと見つけた店で忘れられない宝物に出会うことも。そんな偶然に満ちた体験ごと楽しむのが、下北沢で古着を巡る面白さです。

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音楽、演劇、ファッションが混ざり合う街「下北沢」

渋谷や新宿から電車で数分の距離にある下北沢、通称「シモキタ」。ここには歴史のあるライブハウスや劇場が多くあり、バンドマンや役者、ものづくりに携わる人など、何かを表現したい人たちが集まってきた街です。平日・休日を問わず多くの人でにぎわっているのは、この街が単なる流行の発信地ではなく、自分のスタイルや独自の価値観を持った人たちを惹きつけ続けているから。そんな下北沢を語るうえで欠かせないのが「古着」です。

近年は大量在庫や手ごろな価格を打ち出す古着チェーンも増えていますが、この街の古着文化の核にあるのは、店主の偏愛や、服に対する独自の美意識といった“個性”。それぞれの「好き」を突き詰めて形にしている古着店が、下北沢には今も数多く残っています。

その背景には、音楽、演劇、ファッションと多様な表現や価値観を受け入れる、この街ならではの土壌があります。異なるカルチャーが交わり、互いの違いを否定せず、むしろ面白がりながら共存してきた街。だからこそ、自分の好きなことを、自分のやり方で続ける人や店が根づき、個性的な古着文化がつくられていったのです。

商店街と路地が入り組む街で「古着」を巡る

京王線と小田急線が交差する下北沢は、駅から四方へ道が伸び、複数の商店街と細い路地が入り組む独特の街並みが広がっています。また、渋谷や原宿のような大規模な商業地とは異なり、少し歩けば住宅街が現れ、商店街のにぎわいと日常の風景がすぐ隣り合っているのも特徴です。

そんな地形のなかで、個性的な古着店は商店街のメイン通りだけでなく、一本入った裏道や雑居ビルの中、あるいは住宅街のなかにひっそりと店を構えています。この街で古着を巡るなら、あてもなく歩きながら偶然の出会いを楽しむのがおすすめ。ふらっと入った店で思いがけないアイテムに出会ったり、道に迷いながら見つけた店で運命の一着に出会ったり。そんな偶然に満ちた体験こそが、下北沢で古着を巡る面白さです。

街を歩いていると、途中でいくつものライブハウスや劇場にも出会います。そうしたカルチャーの密度の高さも、下北沢らしさのひとつ。そんな下北沢の空気を感じながら、ユニークな古着店を巡りましょう。

にぎやかな「南口商店街」の先でマニアックな古着に出会う

まずは、下北沢駅東口の改札を出ます。駅前には古着店の紙袋を手にした人が大勢行き交い、タイミングによっては駅前で古着のマーケットが開かれていることも。いきなり古着の街らしいにぎわいを感じられます。

下北沢駅の東口。下北沢駅は小田急線と京王井の頭線が乗り入れており、改札を間違えやすいので注意。小田急線はブルー、京王井の頭線はピンクの看板を目印にするとわかりやすいです。

駅に直結する商業施設『シモキタエキウエ』。複数の飲食店が軒を連ねる中、古着のポップアップを開催していることもあります。

2022年3月に開業した商業施設『ミカン下北』。新しい建物ですが、個人店が密集していたかつての下北沢を思わせる雑多さも残していて、街の住人にも受け入れられています。

東口改札を右に曲がると見えてくるのが、「下北沢南口商店街」。緑の看板を目印にして、人の流れに沿って歩いていきます。ファストフード店から大型の古着店まで、さまざまな店がひしめくこの通りは、下北沢の中でもとりわけ人通りの多いエリア。路面には格安古着店のラックやトルソーがせり出していて、古着街らしい活気が伝わってきます。

若者や観光客でごった返す「下北沢南口商店街」。入り口には緑の看板が掲げられています。

路面に置かれた古着店のトルソーやラックが目につきます。

まっすぐ進むと、道が大きく三方向に分かれる三叉路に出ます。そのにぎわいを抜けると、中華料理チェーン『餃子の王将』が見えてきます。その向かいにある古い雑居ビルの入口に、不気味な手書きの文字で「古着屋」と書かれた立て看板を発見。知らなければ通り過ぎてしまいそうなこの古着店が、『MIMIC』です。

たくさんの人が行き交う三叉路。この先から、少しずつ街の表情が変わっていきます。

一歩店内に足を踏み入れると、アニメTシャツや希少なデザイナーズヴィンテージなど、オーナー・TAKARAさんが集めたマニア垂涎のアイテムがぎっしり。民族衣装のようなドレスや大胆な刺繍のシャツなど、一見すると着こなすのが難しそうなアイテムも、TAKARAさんのうんちくやスタイリングのアイデアを聞いているうちに、どんどん魅力的に見えてきます。独自の視点を持った店主の話を聞けるのも、下北沢で古着を巡る楽しみのひとつです。

脇道を覗いてみると住宅だけかと思いきや、古着やカレーなど小さな個人店がいくつも出現。どの道に入っても退屈しません。

あちこちにカルチャーがにじむ「茶沢通り」沿い

『MIMIC』を後にして、住宅が立ち並ぶ脇道を歩いていきます。「南口商店街」を離れ、低層の住宅や飲食店が並ぶ「茶沢通り」へ。しばらく歩くと、カラフルな帽子と花器が並ぶガラス張りの店が見えてきます。セレクトショップのような洗練された雰囲気ですが、ここは帽子と花器を扱う古着店『sowhat vintage』です。

店内には、店主の加藤太郎さん、佳純さん夫妻が集めた企業ロゴや映画モチーフのヴィンテージキャップ、まるでアート作品のようなデザインのヴィンテージ花瓶がずらり。古着店が多い下北沢だからこそ、他とは違う個性を出したい。そんな思いからキャップや花瓶を集め始めたといいます。こうしたニッチなアイテムに特化した店が成り立っているのも、この街らしいところです。

「茶沢通り」の周辺には、ライブハウスや小劇場が点在。下北沢が音楽と演劇の街だといわれるのは、こうした表現の場所が街中に溢れているからです。さらに目を向ければ、レコードショップや音楽喫茶、レコードバー、映画館なども数多くあり、街全体がカルチャーの気配に満ちています。

『sowhat vintage』を後に北へ向かって歩いていくと、『下北沢SHELTER』や『下北沢CLUB Que』といったライブハウスが現れます。いずれも日本のパンク・ロックバンドの登竜門とされ 、下北沢の音楽シーンを語るうえで欠かせない存在。特に『下北沢SHELTER』はアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」でも舞台となり、聖地巡礼スポットにもなっています。

『下北沢SHELTER』の入り口。地下へ下る階段とネオンが象徴的です。

『下北沢CLUB Que』へ向かう階段には、音楽を奏でる浮世絵モチーフのペイントが施されていました。

さらに進むと『鈴なり横丁』が見えてきます。ここは昭和時代に建てられた『すずなり荘』というアパートを改築してつくられた一角で、1階にはバーやスナック、2階には下北沢の演劇・映画文化を支えている劇場『ザ・スズナリ』と『シアター711』が入っています。

このように下北沢は、ファッション、音楽、演劇と様々なカルチャーが混ざり合ってできている街。表現から生まれるカルチャーが育ちやすい土壌が、この街にはあるのです。

バーやスナック、劇場が混在する『鈴なり横丁』。

夜営業の店が多く、夕方前はひっそりとした空気が漂います。

古びた外観から、どこか懐かしい雰囲気が感じられます。

人通りの少ない場所に“偏愛”の店がある「一番街商店街」

『鈴なり横丁』を通り過ぎると、「下北沢一番街商店街」が見えてきます。ここは下北沢で最も歴史のある商店街で、昔からこの街に根づいてきた店が多く残っているエリア。南口商店街のにぎわいとは対照的に、観光客よりも地元の人の姿が目立ち、落ち着いた空気が流れています。

下北沢は脇道に古着店があるのが特徴ですが、このあたりはその中でも特にマニアックな店が多くあり、人通りの多さに頼らず、店主の好きなものを突き詰めた店が集まっています。

「下北沢一番街商店街」の人通りは落ち着いていて、スローな空気が流れています。

レトロな外観の飲食店や大型古着店『NEW YORK JOE』のネオン看板など、思わず写真を撮りたくなる風景が続きます。

脇道に出たり入ったりしながら歩いていると、ビルの下に看板が密集した一角を発見。そのなかにネオン看板が輝く古着店『Pheasant』があります。

店内に入ると、壁や天井にロックのポスターやステッカーがびっしり貼られていて、レザージャケット、デニム、ワークパンツなど、バイク好きの店主・田中さんならではの視点が、店全体にくっきりと表れています。流行や売れ筋の古着を扱うのではなく、自分の好きなカルチャーに忠実であること。そんな店主の姿勢がそのまま店になっている古着店です。

引き続き「一番街商店街」を進んでいると、道の脇にグリーンの立て看板が。脇道に入って少し進み、白く塗られたドアを開けると、そこに広がっていたのは店主・阿部さんが集めたアメリカのヴィンテージ雑貨が並ぶ『Abesho 2nd』です。

壁を埋め尽くすガーフィールドのぬいぐるみ、額装されたペーパーナプキン、ショーケースに並ぶカレッジリング。『Abesho 2nd』のラインナップを見ていると、服だけではなく、雑貨にもそれぞれに背景や面白さがあることがわかってきて、ヴィンテージの楽しみ方そのものが少しずつ広がっていきます。

「一番街商店街」を出る前にあるアーチ看板。下から見上げると天狗のペイントを見ることができます。

「鎌倉通り」の横道で、古着の世界が広がる

「一番街商店街」を抜けて下北沢駅の方へ戻る途中、「下北沢成徳高等学校」を右手に鎌倉通りを進み、横道に入っていくと、複数の古着店が並ぶエリアがあります。

駅の方面を目指しながら歩いていると、スターバックスの前に置かれたサッカーユニフォームを着たトルソーが。階段を上ってみると、そこにはヴィンテージユニフォームの店『KIMAMA』がありました。

京王線の踏切。夕方は静かな空気に包まれています。

静かな住宅街エリアで出会った“ととのった”古着店

駅の南西口の方に向かい、京王線の踏切を渡ったエリアは静かな住宅街。さすがにもう古着の店はないかも……。そう思い始めたころ、またも脇道に入ったところで、『e’s yarn』と店名が書かれた案内標識が。

店内に足を踏み入れてまず目を引くのは、美しく整えられた商品の陳列。オーナーの江邉さんは、以前『UNIQLO』で働いていた経験を持つ人物で、整頓された売り場づくりはお手のもの。並ぶのは、日常に取り入れやすいベーシックなアメカジアイテムが中心。レディースや、品のいい古着を探している人にもぴったりで、個性的すぎる古着に少し気後れしてしまう人でも入りやすい一軒です。

小さな看板や灯りに気づき、路地に入り、ようやく一軒の店にたどり着く。掘り出しものに出会う高揚感はもちろん、偏愛を貫く店主に出会い、さまざまなカルチャーや価値観に触れる。気の向くまま歩きながら、下北沢で古着店を探検してみてください。

 

Photo: Ray Ogishima(landscape) , Akihiro Furuya ,Ray Oghishima , Sara Hashimoto , wacci ,Yuji Sato(store)