記憶をまとう時代を作ってきた古着。裏原宿の隠れ家

PAT MARKET

住所
東京都渋谷区神宮前3-27-8 PAT MARKET
最寄駅
原宿駅 徒歩10分
支払情報
現金、クレジットカード、電子マネー
SNS
Wi-Fi

日本のファッションカルチャーを象徴する、原宿の喧騒から少し離れた場所に、世界中のファッションフリークに高感度なユース世代を引きつける古着店、『PAT MARKET』はあります。コロナ禍という困難な時代を背景に誕生し、口コミだけでその名を広げてきたこのショップは、4人のオーナーによる独立したセレクト眼がひとつの空間に共存する、新しい形のコレクティブショップです。過去の名作を現代のストリートへと地続きでつなぐ、『PAT MARKET』を取り上げます。

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古民家を自らD.I.Y.カスタムした隠れ家ショップ

原宿駅から歩くこと約10分。アパレルショップが立ち並ぶキャットストリートから1本裏手へ入ると、その古着店は現れます。古い民家を丸ごとスタッフ自らリノベーションした2階建ての建物が、今回紹介する『PAT MARKET』です。

『PAT MARKET』は、キャットストリート近くの前にある駐車場の奥の細道沿いにあります。

大通り沿いのような派手な看板はなく、あらかじめ場所を調べておかなければまず辿り着けない、まさに隠れ家と呼ぶにふさわしい佇まい。しかし、一歩足を踏み入れれば、そこには外観からは想像もつかない濃密なファッション世界が広がっています。

ショップの外壁には過去に行われたイベントのフライヤーやポスターなどが貼ってあります。

ショップの扉はアルミで覆われているので、ショップを訪れる際の目印に。

グローバルアーティストから東京のユースまでが集う空間

オープンしたのは、世界的に外出の制限を余儀なくされていた2022年1月。決して恵まれたスタートではなかったものの、SNSや純粋な口コミでハイセンスなセレクトが徐々に拡散されていきました。今や、ショップを訪れるゲストの約6割が海外からの旅行者だそう。なかには、世界的に有名なファッションデザイナーのラフ・シモンズ氏やジョニー・ヨハンソン氏、さらにはラッパーのエイサップ・ロッキー氏といった世界的なトップアーティストらが、お忍びでショッピングに訪れるほどです。

「RAF SIMONS」の創業者であり、現在は「PRADA」のクリエイティブ・ディレクターを 務めるラフ・シモンズ氏

「Acne Studios」のクリエイティブディレクターのジョニー・ヨハンソン氏

人気アーティストであり、ファッションアイコンでもあるエイサップ・ロッキー氏

その一方で、日本の20歳前後の学生や若いファッショニスタ達も日常的に集います。世代や国籍を超えて人々が引き寄せられる理由は、異なる背景を持った4人のオーナーが、それぞれのフロアを独立してディレクションしているというユニークな構造にあります。

ショップには所狭しと国内外のファッションブランドの貴重なアーカイブが並んでいます。

白の階段を登った先には、1階とは違ったセレクトのアイテムがたくさん広がっています。

モードに裏原、音楽。2フロアに凝縮された独自セレクト

店内は1階と2階で異なる空気感のセレクトが展開されています。1階を担当するのは、池袋で『Only One』を運営するハルト氏と、同じく池袋でレディース中心の『PAT MARKET』2号店を手がけるハヤシン氏の2人。1990年代〜2000年代の原宿カルチャーが勢いに乗っていた時代の空気感をベースに、現代の若い世代のシーンにフィットするヨーロッパのコレクションブランドなどをミックス。ストリートとモードの境界線を心地よく融解させたフロアとなっています。

これまで時代を作ってきた膨大なアーカイブがディスプレイされている1階フロア。宝探しの感覚でお気に入りの1着を見つけることができます。

1990年半ばから2000年代初頭の東京のストリートスナップを集めた雑誌『TUNE』と『FRUiTS』のバックナンバーが、オフィシャルで取り扱われています。

モードやストリート、さらに男女も問わず、アクセサリー類も豊富にディスプレイ。

「COMME des GARÇONS SHIRT boy」のファーストローンチ時のナイロンコートジャケット 52,000円

鮮やかなレッドが目を惹く「ARMANI JEANS」のライダースジャケット。ラム素材ならではの柔らかな肌触りも魅力。32,000円

イタリア発のブランド、「ANDREW MACKENZIE」のデニムシャツ。随所の加工やデザインが興味深い。35,000円

2020年代初期あたりの「KEISUKEYOSHIDA」のパンツ。ダッフルコートのディテールを取り入れたデザインが新鮮。19,000円

「Yohji Yamamoto POUR HOMME」のコレクションラインのブーツ。インパクトあるグリーンカラーが特徴的。49,000円

一方、階段を上がった2階フロアは、原宿で『CC STORE』内で『Corrida』も営むジン氏とヒカル氏の2人がセレクトを展開する空間。こちらは1990年代から2010年代初頭の日本のデザイナーズブランドを中核に据え、厳選されたインポートアイテムも並んでいます。

2階のフロアをディレクションするオーナーのジンさんと、DJやスタイリストとしても活動するスタッフのIOさん。

1階と同様、たくさんのアーカイブが並ぶ2階。こちらは1階と比べると日本のストリートブランドの比率が高いそう。

アーティストのYAMEPI©氏もメンバーにいるCOMET©︎クルーが手がけるストリート誌『COMET©︎ MAGAZINE』がオフィシャルで販売されています。

どちらのフロアにも共通しているのは、単なる古着ではなく、カルチャーの文脈のあるアーカイブとしての価値を提案している点です。「Maison Margiela」や「COMME des GARÇONS」「BALENCIAGA」といったブランドがあるかと思えば、2000年前後の「BOUNTY HUNTER」や「UNDERCOVER」といった裏原宿の全盛期をアイテムも同居しています。さらに2階では、「SWAGGER」や「NITRAID」といったヒップホップ文脈のブランドから、「KTZ」や「Jeremy Scott」などといった、音楽をバックボーンに持つブランドが置かれており、独自の存在感を放っています。東京という都市が経てきた独自のファッション史を、そのまま凝縮したラインナップこそが、日本らしさとも言えるかもしれません。

2010年代にJSウィングスの派手なデザインで注目を集めた「adidas originals by originals Jeremy scott」のライダースジャケット。今見ても新鮮なデザイン。40,000円

「adidas originals by originals Jeremy scott」と同じ2010年代に人気を集めたロンドン発の「KTZ」のブルゾン。発色豊かなデザインが強烈。30,000円

単色ながらも首元のデザインがアクセントになった「COMME des GARÇONS」のニット 各30,000円

音楽をバックボーンに持つ「PHENOMENON」と「ROC STAR」によるコラボリング。わかる人にはわかるならではのデザインが秀逸。(2個セット) 25,000円

2010年半ばの鮮烈なデビューから根強い人気を集める「VETEMENTS」。ドルモチーフの総柄デザインがインパクト抜群。60,000円

過去の名作が現代ではより新鮮。個性豊かなスタイリング

『PAT MARKET』が提案するのは、単に過去の名作を珍しがるスタイルではありません。現行のトレンドに対して、自分達が今、本当にカッコいいと信じる過去のピースをどう融合させるか、というパーソナルな解釈だと、オーナーのひとり、ジン氏は話します。スタッフの着こなしも、そのフィロソフィーを体現しています。現行のドメスティックブランドやハイブランドの新作に、20年前のアーカイブを違和感なく落とし込むこともあれば、時代を象徴するヴィンテージだけで全身を固めつつも、シルエットやアクセ使いで今のスタイルへと昇華させることも。ルールに縛られず、ファッションが持つ歴史を自分の個性として着こなすためのヒントが、彼らのスタイリングには詰まっています。

JIN_『PAT MARKET』、「CC STORE」 オーナー 現行の東京ストリートで大きな支持を得ている「AFB」のセットアップを軸に令和ヤンキー風にスタイリング。ボリュームある「VANS」のサンダルも存在感あります。

IO_パートタイムロックスター あえていなたく合わせてみたというコーディネートは、ユーズドのパーカとTシャツに、ゆったりめな「DSQUARED2」のパンツを。「Dolce&Gabbana」のサングラスの存在感が視線を集めます。

単なる古い洋服の売り買いを超えて、ファッションを起点に新たなカルチャーが生まれている『PAT MARKET』。ここには、アンダーグラウンドな熱量から、オーバーグラウンドなメインストリームまで、多様な価値観が交差する新しいファッションの在り方があります。ただ消費されるだけのトレンドに退屈しているなら、ぜひこの場所を調べて、自らの足でその扉を開けてみてください。東京のストリートの新しい1ページが、ここから始まっています。

2010年代初頭に爆発的な人気を集めた「adidas originals by originals Jeremy scott」のスニーカー。その存在感は今なを健在です。

Online

Photo: Yuji Sato / Text: Shuichi Aizawa(PineBooks Inc.)

この記事の内容は2026年07月23日(公開時)の情報です