“KAWAII”のに“STRONG”な日本独自のポップカルチャー 「女子プロレス」

アイドルのように華やかなコスチュームに、個性あふれるキャラクター。けれど、ひとたびゴングが鳴れば、リング上では激しい技と真剣勝負が繰り広げられる。それが、日本で独自の進化を遂げてきた「女子プロレス(女子プロ)」です。スポーツであり、エンターテインメントであり、 “推し活”でもあるこのカルチャーは、いま海外のファンからも注目を集めています。海外でも大会を開催する団体「東京女子プロレス(TJPW)」の後楽園ホールでの試合に密着しながら、“カワイイ”と“ストロング”が共存する「JOSHI PRORESU」の魅力を紐解きます。

SHARE

X (Twitter) Share on Threads Facebook LINE

“KAWAII”と”STRONG”が共存する「女子プロレス」とは?

女子プロレスとは、女性レスラーたちが鍛えた身体と技術を武器に、リング上で多彩な戦いを繰り広げるプロレス文化です。迫力ある技や攻防だけでなく、個性豊かなキャラクターや華やかなコスチューム、試合の中で生まれるドラマ、観客との一体感まで楽しめるのが特徴。スポーツであり、エンターテインメントでもある、日本ならではのライブカルチャーとして発展してきました。

壮絶な絞技から逃れようとする選手への応援や、豪快な投げ技で相手をマットに叩きつけ、フォールを狙う場面では、レフェリーのカウントに合わせて観客席からも大きな声が上がります。

3WAYタッグマッチでは、スーパーロングヘアの選手の髪を綱引きのように引っ張り合う、こんなコミカルなシーンも。それぞれが個性的なキャラクターを生かして戦っています。

日本の女子プロレスのはじまりは1940年代後半。1960年代後半には、その後の日本の女子プロレス界を長く牽引する団体「全日本女子プロレス」が誕生し、テレビ中継を通じて人気が拡大しました。1970年代には、歌手としても活躍したタッグチーム「ビューティ・ペア」がアイドル的人気を集め、1980年代にはその流れを受け、若い女性を中心に国民的スターとなったタッグチーム「クラッシュ・ギャルズ」が誕生。一方、最大のライバルとして、最恐のヒール(悪役レスラー)として知られる「ダンプ松本」が登場。スターと悪役の激しい抗争は日本中を熱狂させ、女子プロレスは社会現象として発展。Netflixシリーズで人気を博した『極悪女王』が描いたのは、まさにこの時代でした。

1980年代の女子プロレスブームを象徴する最恐ヒール「ダンプ松本」の半生を描いたNetflixシリーズ『極悪女王』。少女時代から、“全国民の敵”と呼ばれるほどの人気を集めた悪役レスラーへと変貌していく姿を描きます。Netflixシリーズ「極悪女王」独占配信中

同期のレスラーであり、アイドル的人気を誇った「クラッシュ・ギャルズ」との激しい抗争も描かれます。

現代の女子プロレスは、そうした歴史の延長線上にありながら、“かわいさ”“アイドル性”“ファンとの距離の近さ”といった新しい魅力を加え、日本ならではのポップカルチャーとして、さらに進化しています。

格闘技の聖地と呼ばれる「後楽園ホール」は、プロレスにとっても特別な場所です。1962年のオープンからずっとプロレスの歴史を支えています。

その後は、団体ごとに異なるスタイルや世界観が生まれ、選手それぞれの個性や衣装、ファンとの交流まで含めて楽しむ、現代ならではの文化が育まれていきました。今回取材した「東京女子プロレス(TJPW)」も、そんな新しい女子プロレスの楽しみ方を体現する団体のひとつです。

“見終わって幸せになれる”「東京女子プロレス」の文化

「東京女子プロレス(TJPW)」は、そうした既存の女子プロレス団体とは異なる流れから誕生しました。母体となったのは男子プロレス団体「DDTプロレス」で、「DDT」は本格的なプロレスを軸にしながら、ユニークな試合形式や大胆な企画などのエンターテインメントを取り入れ、独自のスタイルを築いてきました。そんな自由な発想をルーツに持ち、独自の文化を一から育ててきました。

TJPWの人気選手たち。コスチュームにも、メイクやヘアにも、それぞれの個性が光ります。また、ヒール役を存在させず、因縁や対立を全面に出さないのもTJPWの特徴です。

大きな特徴は、ヒール(悪役レスラー)がいないこと。勝敗の先に強い憎しみや対立を残さず、また、他団体との対抗戦を行ったり、因縁を前に出すこともしません。

「ファンの方からよく言っていただくのは“見終わって幸せな気持ちで帰れる“ということです。応援していた選手が負けて悔しくても、それ以上に”次も頑張ってほしい“と思える。リングに上がる選手みんながキラキラしている、とも言っていただきます」。そう語るのは、TJPWの事業責任者の高橋さん。

その背景には、「DDT」から受け継いだ“個性を活かす”という発想があります。体格やスポーツ経験だけで選手像を決めるのではなく、その人自身のキャラクターや表現したいものを、プロレスという舞台の上で引き出していくのです。

「TJPWのリングは“なりたい自分になれる場所”だと言う選手もいます。普段とは違うコスチュームに着替えることで、自分の個性や、普段はなかなか出せない一面を表現できる。そうしたものがお客さんにも伝わっているのだと思います」(高橋さん)。

TJPW内のアイドルユニット「アップアップガールズ(プロレス)」によるライブから大会はスタート。「歌って、踊って、闘える」最強のアイドルを目指す彼女たちのパフォーマンスは、TJPWならではの光景です。

選手の個性が詰まった、華やかなコスチューム

「東京女子プロレス(TJPW)」の選手がリングに登場した瞬間、まず目に飛び込んでくるのが、選手それぞれの個性が詰まった華やかなコスチュームです。色やシルエットなどさまざまなコスチュームは、基本的には選手自身が考えており、メイクやヘアスタイルも含めセルフプロデュースをしています。

コスチュームの上に羽織る入場ガウンも華やか! 

さらに、選手それぞれの個性が際立つデザインになっています。

「コスチュームはすごく大事です。初めて見る選手なら、まだ名前はわからなくても、“黄色のフリフリした衣装の子がよかった”というように、色や形から覚えてもらえる。子どもたちにも、そういうところから選手を覚えてもらえると思っています」(高橋さん)。

華やかなコスチュームやヘアメイクは単なる飾りではなく、選手が“なりたい自分”や、自分らしいキャラクターを表現するための大切な要素。衣装は、選手の名前を知らない観客にも、その人のキャラクターをひと目で伝える“もうひとつの自己紹介”なのです。

そして高橋さんによれば、そのカラフルな世界観から、日本で長く親しまれている魔法少女のアニメシリーズ『プリキュア』のようだと言われることもあるとか。

ひとりひとり異なる世界観をまとった選手たちが登場する姿は、まさに日本のポップカルチャーを凝縮したような華やかさです。

原宿ぽむ選手は“原宿生まれの原宿育ち”を名乗り、ロリータファッションのようなチェック柄のコスチューム。コミカルな明るさが人気を集めています。

原宿ぽむ選手&らく選手のタッグチームは、「おやすみエクスプレス」という人気技にちなみ、布団を持って入場。TJPWのなかでもキャラクターが際立っています。

”KAWAII”だけじゃない、リングで炸裂する”STRONG”なプロレス技

華やかなコスチュームや個性的なキャラクターに目を奪われる「東京女子プロレス(TJPW)」ですが、リングに上がれば、そこは真剣勝負の世界。コスチュームのフリルも気にせず、苦痛に顔を歪ませ、それでも立ち向かっていく彼女たちの姿に、思わず応援する手に力が込もってしまいます。

「受け身や基本的な動きなど、プロレスの基礎を徹底して磨くことを大事にしています。ちょっとおもしろい企画をやるにしても、ベースがしっかりしているからこそ楽しんでもらえる部分があると思います。また、それぞれが自分の個性に合った技を考えて、使っている選手も多いです」と、高橋さん。

華麗に宙を舞い、相手をリングに沈める技に、観客から大きな声援が湧きます。

意地と意地がぶつかりあい、お互い一歩も引かない攻防戦は、つい手に汗を握ります。

TJPWが掲げるチームスローガンは「KAWAII×DREAM×STRONG〜明日が楽しみになるプロレス〜」。かわいいだけじゃなくて、強さもちゃんとある。そしてこの強さには、単に肉体的な強さだけではない意味が込められていると言います。

「個性が際立っていることも“強さ”だと思っています。キャラクターの強さだったり、折れない心の強さだったり。“あなたの強さは何ですか?”と聞いたら、選手それぞれに違う答えがあると思うんです」(高橋さん)。

リング上で見えるのは、鍛えられた技術だけではなく、一人ひとりが持つそれぞれの“強さ”。“カワイイ”と“ストロング”。一見相反するようなふたつが、同じリングの上で成立している。それこそがTJPWらしさなのです。

まるで魔法少女のようなフリルたっぷりのコスチュームで、コーナーから飛びかかる姿は、まさにKAWAII&STRONG。

ときには場外乱闘になることも。前列の観客は避難しながら、戦いの行方を見守ります。

試合が終わったあとは“ノーサイド”。試合が終われば敵も味方もないというラグビーの精神ですが、TJPWにも当てはまります。

因縁や対立のない選手たちは、抱き合ったり、笑顔でお互いを讃えあいます。

まず知りたい「東京女子プロレス」の注目レスラー5人

荒井優希選手

アイドルグループ「SKE48」での活動を経て、プロレスラーへ転身した荒井選手。そのキュートなルックスとは対照的に、リングでは激しい技を繰り出し、全身全霊で戦います。試合で一番見てほしいのは「表情」だそう。「本気で戦っている表情を見てほしい」と、試合中も顔が見えるようヘアスタイルまで工夫しています。

「リングに立つと、自分のことしか考えられなくて。今日この技この間より上手にできたなとか、この技決まるようになったなとか。そういう成長を自分で感じられるのが嬉しい」。

「試合中は必死になりすぎて、描いた眉毛が消えちゃったりもするんですけど(笑)。それも含めぜひ見てください」。

上福ゆき 選手

“日本一の美女レスラー”との呼び声も高い上福選手。芸能界を経てプロレスラーとなり、抜群のスタイルを活かしてグラビアでも活躍しています。クールな衣装とメイクが印象的で、女性ファンからも支持を集めています。なお、2026年12月26日をもって引退することを発表しています。

「コスチュームはあまりプロレスラーっぽくしたくなくて。めちゃめちゃボディラインが見えるようにして、スタイルで威嚇しています(笑)」。

「会場には私のことを好きな人だけじゃなくて、たぶん嫌いな人もいると思うんです。でも、今日私のことが嫌いだった人が、試合を見て好きになってくれたらいいなって。一生懸命やっていることって、ちゃんと伝わるといいなと思っています」。

鈴芽選手

友だちに誘われた試合でTJPWのファンになり、ついには自身がTJPWのプロレスラーになったという鈴芽選手。152cmと小柄な体格を活かしたスピードと躍動感あふれるファイトスタイルと、元気な笑顔で人気を集めています。モチーフは「スズメバチ」で、イメージカラーのイエローを基調としたコスチュームに身を包みます。

「それこそ入場は笑顔なんですけど、その後は表情なんてまったく取り繕ってなくて、全身全霊で戦っているので、そこを見てほしいですね。やっぱりリング上の私が一番輝いていると思うので」。

「自分がTJPWのファンのとき、直接応援を届けられるのが大好きだったんですよね。いまは自分が応援を届けてもらえる立場になって、勝ったときは喜んでくれるし、負けたときは悔しがってくれる。一緒に戦ってくれてるんだなって感じられることで、いつも頑張れています」。

辰巳リカ選手

辰巳選手は、 “クレイジーファイト“と呼ばれる狂気を感じさせる荒々しいファイトスタイルを得意とし、リング上ではまるで別人のように変身します。憧れの芸人・くっきー!から授かったという”狂人キャラ“でリングに登場することも。キャッチコピーは苗字の“辰”にちなんだ“This is ホワイトドラゴン”。

「コスチュームのポイントは、私のメインカラーのホワイトに、好きなパンクロック要素を入れたところ。メイクもアイライナーをホワイトにしています」。

「試合では得意技はもちろん、どの動きも意味があるんです。入場した瞬間から、目を逸らさずにすべて見てください」。

中島翔子選手

芸能事務所・吉本興業の芸人養成所出身で、お笑い芸人として活動したのちTJPWへ。旗揚げメンバーのひとりでもある中島選手は、身長147cmと小柄ながら、鍛え抜かれたパワーで自分より大きな選手も豪快に投げ飛ばします。明るいキャラクターと力強いファイト、そのギャップが中島選手らしさです。

「ファンの方と直接話すと、私を応援してくれていることをリアルに感じられるんです。さらに、プロレスが好きなことが伝わってくると、もっと嬉しいですね」。

「TJPWって、すごく日本っぽいと思うんです。日本のアニメやマンガのように、選手それぞれに個性があって、コスチュームを見ただけでも“この子はこういうキャラクターなんだ”ということが伝わる。性格や個性もコスチュームに反映されているので、アニメを見ているような感覚で、自分の好きな選手を見つけて応援できるところが魅力だと思います」。

試合はイベント満載で「推し活」として楽しめる!

ゴングが鳴り終わっても、「東京女子プロレス(TJPW)」の楽しみはまだ続きます。大会後には、選手と直接交流できる特典会が行われることも多く、“推し”との距離の近さもTJPWを楽しむ大きなポイントです。

通常は、選手のポートレートを購入するとサインがもらえ、さらに自分のスマホで選手のワンショットを撮影できます。大会によっては2ショット撮影会も開催。さらにTJPWらしいユニークな企画として、選手がファンの似顔絵を描く「お絵描き会」が行われることもあります。

愛野ユキ選手のサイン会に並びました。サインをしてもらうあいだは、試合の感想や、応援メッセージを伝えることができます。愛野選手は笑顔で、しっかり目を見ながら答えてくれたので、大変緊張…! こんなに近くで、素の表情に近い選手と触れ合えると、思い出になるし、さらに選手のことが好きになると実感しました。

購入したポートレートにサインをもらいます。10文字まで、名前やニックネームも入れてくれます。

最後に自分のスマホでワンショット撮影ができます。

撮影したワンショットがこちら。自分だけのためにポーズを決めてくれるので、携帯の待ち受けにするのにもぴったり。

こうしたファン交流会を、海外大会でも同様に行ったそうですが、大変喜ばれたそう。

「海外だからと変にローカライズせず、日本でやっているものをそのまま持っていきました。それをたくさんの方が楽しみにして参加してくれたんです。女子プロレスという文化が、海外でもそのまま通用するんだという自信になりました」(高橋さん)。

選手たちの中には、海外のファンとの交流のために英語を勉強している人もいるそう。さらに、日本の会場でも、試合のみならず、特典会に並ぶ海外からの観客も増えています。

リング上で応援するだけでなく、試合後には直接選手に気持ちを伝えられる。そんな距離の近さも、何度も会場へ足を運びたくなる理由のひとつです。

お絵描き会は、似顔絵を描く1分間のあいだ、好きな選手が自分の顔をまじまじと見てくれるので、ファンにとっては嬉しいこのうえない時間。そして描いているあいだは選手とトークも楽しめる。定期的ではなく、特別に行われる特典です。

2ショット撮影会は、選手と隣同士の椅子に座り、自分のスマホでスタッフに撮影してもらいます。

それぞれお目当ての選手の列に並びます。人気選手は長蛇の列になることも。

最後尾のファンは、選手のプラカードを持ちます。後ろに来たファンに回していくのですが、みんなルールを守り、静かに順番を待っていました。

試合前の後楽園ホールには、選手の推し活うちわを持ってかけつけるファンが大勢。現代女子プロレスのアイドル性を表しています。さらに女性のファンが増えているのも特徴。

“カワイイ”も“ストロング”も“推し活”も、どれかひとつではなく、すべてが同じ場所にあるのが女子プロレスのおもしろさです。日本のアニメやマンガとはまた違った、リアルタイムで物語が続いていくポップカルチャーとして、ぜひ一度その熱気を会場で体感してみてください。

密着した日の試合結果はこちら!


公式URL:https://www.tjpw.jp/results/6a23bbbcfac1ea000213baa8

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=l8goclhrdWE

ⓒTJPW / Photo: Kentaro Kambe / Edit: DEEPTOKYOmagazine