2026.07.03
毛抜きから包丁まで揃う創業240年超の刃物専門店
『うぶけや』は、日本橋人形町にある1783年創業の刃物専門店です。 丁寧な仕上げと確かな「研ぎ」の技術で信頼を集め、200年以上にわたり刃物づくりを続けてきました。和包丁や洋包丁をはじめ、裁ちばさみや毛抜き、和ばさみ、洋ばさみなど、用途に応じた多彩な刃物が揃います。国内外の料理人や職人など、さまざまな分野のプロが訪れます。
『うぶけや』は、刃物の専門店として1783年に大阪で創業。店名は初代が打った刃物が、うぶ毛も剃れる、切れる、抜けると客に評されたことにちなんで名付けられました。1800年代、商業の中心地であった日本橋に移転し、魚河岸に出入りする料理人や鮮魚店からの注文に応えながら、その技術を継承してきました。
現在は、和包丁や洋包丁をはじめ、裁ちばさみや毛抜き、和ばさみ、洋ばさみなど、一般向けのものから専門用途まで、400種類以上の刃物が揃います。店内の一角には、有形文化財に指定された100年以上前の刃物が展示され、その長い歴史に触れることができます。
一般的に刃物は、熱した鋼を打ち、形を整える職人、手で握る柄の部分をつくる職人など、それぞれ専門の職人による分業制でつくります。『うぶけや』でも、各職人から部品を受け取り、刃物の最終仕上げを行います。包丁であれば、刀身のわずかな曲がりやゆがみを整え、柄を取り付けた後、刃付けと仕上げ研ぎを施して、本来の切れ味を引き出します。
お客の手に渡った商品の修理や研ぎ直しは、職人である店主自ら行います。預かり期間を最小限に抑えられるため、この形態は長く受け継がれてきました。
9代当主・矢﨑大貴さんによると、包丁だけでなく、はさみや毛抜き、かみそりなどいろいろな刃物を扱うため、「研ぎ」の修行には10年を要するといいます。
「基礎を習得してからが応用。時代とともに、ライフスタイルも変化していきますし、お客様それぞれの使い方があるので、それにできるだけ寄り添うよう⽇々研鑽しています。まさに、死ぬまで修行です」
店舗は、1923年の関東大震災で焼失した後に再建された木造建築。中央から放射状に梁が広がる日本家屋ならではの「唐傘天井(からかさてんじょう)」をはじめ、薄く加工した木や竹を編んでつくる「網代天井(あじろてんじょう)」、桑材だけでつくられた陳列棚など、昔ながらの和風建築の意匠が今も残る、日本橋人形町屈指の貴重な建物です。
人形町駅から徒歩1分、人形町通りに面した立地。
「うぶけやで切れてはいけないものは、毛抜きとお客様とのご縁」。
これは店に代々伝わる格言。使い手との縁が商品を介して長く続くことを、品質のいい毛抜きでつかんだうぶ毛は決して切れずに抜けることになぞらえたもの。切れ味を保って長く使い続けるには、研ぎ直しや柄の交換が不可欠であることから、商品を売ったときからお客とのつき合いが始まることを意味しています。刃物を長く使い続けるには、こうした細かな対応が欠かせないのです。
この記事の内容は2026年07月03日(公開時)の情報です

