2026.05.13
100年以上続く伝統工芸「東京手植ブラシ」に出会える製作所
東京の伝統工芸である「江戸刷毛」と「東京手植ブラシ」を手がける『宇野刷毛ブラシ製作所』。江戸時代に職人の仕事を支える刷毛作りから始まり、現在は職人向けの刷毛やブラシに加え、一般向けの洋服ブラシや靴ブラシなど、幅広い「東京手植ブラシ」を製作しています。製作所でありながら商品を購入できるのも魅力です。
『宇野刷毛ブラシ製作所』は、「江戸刷毛」と「東京手植ブラシ」という2つの東京の伝統工芸を手がけています。その歴史は、刷毛作りから始まりました。
江戸時代、漆塗りや染色、人形製作、歌舞伎の化粧など、高度な技術が求められる仕事の現場で使われていたのが「江戸刷毛」です。職人が手作業で作るその品質は、当時から厚い信頼を集めていました。
その後、明治7(1874)年ごろ、洋服や靴が広まり、職人や商人の間でその手入れ用品も求められるようになりました。そこで、フランス製のブラシをもとに刷毛職人たちが生み出したのが「洋式刷毛」です。さらに時代が進むにつれ、ブラシは機械化により量産されるようになりますが、耐久性の高さ、使い心地の良さ、美しく機能的な佇まいを備えた手植えのブラシは重宝され、やがて「東京手植ブラシ」として受け継がれていきました。近年では、一般消費者からの需要が増え、洋服ブラシや靴ブラシを筆頭に、ボディブラシ、ヘアブラシ、ペットブラシなど、さまざまなブラシが「東京手植ブラシ」として手作業で作られており、海外からも高い評価を受けています。
ひと穴ずつ毛束を手で植え込み、手仕事で作られる「東京手植ブラシ」。
墨田区で大正6(1917)年に初代が創業した『宇野刷毛ブラシ製作所』は、「江戸刷毛」から「洋式刷毛」、そして「東京手植ブラシ」へと続く歴史と技術を今に受け継ぐ製作所です。
「江戸刷毛」の製造からはじめ、昭和25(1950)年から洋式のブラシ作りを開始しました。現在は娘の宇野三千代さんが4代目を継ぎ、従来の職人向けや業務用の刷毛、ブラシのほかにも、時代のニーズに合わせ、一般消費者向けのさまざまなブラシを展開するようになりました。
こちらの工房では、母の千栄子さん(左)と、娘の三千代さん(右)のふたりで製作を行っています。
「東京手植ブラシ」はその名の通り、職人が馬や豚などの天然毛をひと穴ずつ手で植え込んで作る東京の伝統工芸です。ブラシの台座の木地は木工所で製作してもらい、それ以降はこちらの工房でつくられますが、すべての工程において手作業で仕上げられます。墨田区や台東区などで、多くの職人たちによって伝統技術が受け継がれ、その耐久性の高さや使い心地の良さから職人たちや関連業界で厚い信頼を集めてきました。
穴あけ作業をする三千代さん、植え込みをする千栄子さん。
『宇野刷毛ブラシ製作所』での作業は、木工所で製作した木地に、毛束を埋め込むための穴の印をつけるところから始まります。印のとおりに、ひと穴ひと穴、機械であけていき、その穴に毛束を手で植え込んでいきます。その際、引き線(現在は主にステンレス線)ですべての毛を繋げてしっかりと固定するからこそ、機械製に比べて毛が抜けにくく、長く使うことができるのです。植え込み時間は1つにつき大体1時間半ほどですが、すべての工程を含めると、大体1日に3、4個ほどの製作になるそう。
ステンレス線を隠すため蓋を貼り、植えた毛の長さを毛刈り機で整える。
ショーウィンドウには「江戸刷毛」も並びます。職人向けの刷毛も今なお伝統の技で作り続けています。
『宇野刷毛ブラシ製作所』の一番の人気商品は、馬の尻尾の産毛を使った洋服ブラシ。しなやかさとコシのある白馬の尻尾の毛を使った洋服ブラシが一般的ですが、柔らかさを兼ね備えた尻尾の産毛を使った洋服ブラシは、よりデリケートな素材の服にも使えます。産毛を使った洋服ブラシはほかでは出会えない珍しい商品で、いま大変注目を集めているそう。
「時代の変化により、カシミヤなどのデリケートな素材の衣類が増えたことや、お気に入りの服を長く愛用したいと思う方が増え、洋服ブラシが人気になっているようです。男性のユーザーも増えています」と、『宇野刷毛ブラシ製作所』4代目の宇野三千代さんは教えてくれました。
洋服ブラシを使って衣類についたホコリや花粉などを落とし、繊維の毛並みを整えれば服が長持ちし、クリーニングの回数を減らして傷みを防ぐこともできるのです。
すごく柔らかいのにしっかりとコシがある、希少な馬の尻尾の産毛。ニットなどのデリケートな素材に使う洋服ブラシに最適。
手の小さな女性でも扱いやすく軽量な「洋服ブラシ カシミヤ スリムハンドル型」(16,500円)。以前はこちらが人気だったそうですが、男性からの需要が増えたことにより、大判型に注目が集まっているそう。
スーツ用の「洋服ブラシ スーツ 大判型」(33,000円)。台座の面積があるので一度でしっかりとホコリや汚れを払い、生地の目を整えてくれる。
また、人気の洋服ブラシは、ブラシの台座の木地の素材にも種類があります。定番は、桂などが使われていますが、木目の美しさが楽しめる欅を使ったシリーズもあります。
「東京手植ブラシは丈夫で長く使うことができるので、経年劣化を楽しむことができるといいなと思い、欅の素材を取り入れてみました」(三千代さん)。
天然素材ならではの表情があり、シンプルで機能的でありながら美しいデザインも、近年注目されているポイントです。
洋服ブラシは、シンプルな桂の素材(左・27,500円)と、味わいある表情の欅(右・33,000円)から選ぶことができます。
『宇野刷毛ブラシ製作所』で、洋服ブラシと並ぶ人気の商品に、靴ブラシがあります。靴ブラシは用途に合わせて4種類ほどあり、それぞれ毛質や毛の長さが使い分けられて作られています。用途や仕上がりの好みに合わせて最適な1本を選べる、その選択肢の多さも魅力のひとつです。
使い方のポイントは、ブラシの毛が真っ直ぐ靴に当たるようにすること。
伝統的な職人技を受け継ぎながら、現代の生活にも馴染む商品を開発し続ける『宇野刷毛ブラシ製作所』。4代目の三千代さんは、東京の手仕事を国内外へ発信するプロジェクトに参加し、デザイナーとのコラボ商品にチャレンジしたこともあります。
「昔ながらの伝統の技はつないでいきたいですが、同時に新しい時代の人たちの目に留まるようなものも作りたいと思っていました。手植えのブラシは丈夫で長持ちするので、消耗品として使われるだけではもったいないと思ったことから、愛着を持って長く使ってもらえるデザインを、デザイナーさんと相談しながら開発しました。使っていないときは、ただ置いておくだけでもインテリアになる商品ができたと思っています」と、三千代さん。
シンプルな機能美の中に、さらに消費者に喜んでもらえる価値を。三千代さんは、新しい商品を考え続けています。
「手間暇かけて作るので、やはり少し価格が高くなってしまう。長い間、職人さんや現場で使われてきたけど、一般の方にも喜んでもらえる商品でありたいと、常に思って作っています。ただ手作りだから価値があるのではなく、変わっていく時代に合わせて常に喜んでもらえる商品を作りたいです」(三千代さん)。
コラボの千鳥ブラシはテーブルやデスクに置いておき、いつでもササッときれいにできる卓上ブラシ(白馬毛 13,200円)。「江戸組子」という伝統的な木工技術の意匠を取り入れたコラボの雅ブラシ。インテリアとして玄関などに置き、洋服のホコリを払うのにぴったり(麻の葉 馬毛 18,040円)。
『宇野刷毛ブラシ製作所』の商品はオンラインでも購入できます。
ONLINE SHOP:https://unobrush.official.ec/
この記事の内容は2026年05月13日(公開時)の情報です









