2026.01.16
PRアップサイクル素材を使用したものづくりを積極的におこなう『THE NORTH FACE』から、日本のクラフトマンシップとアウトドアテクノロジーを融合したJAPAN COLLECTIONのドリフトダイがリリースされました。素材に採用されたのは、規格外の野菜や漂着ペットボトルといった、捨てられるはずのもの。製品化に携わった企画担当者と素材開発を担った豊島株式会社の話をもとに、ドリフトダイ誕生の背景とものづくりに込められた想いを紐解きます。
ドリフトダイの根幹を支えるのは、繊維を中心に取り扱うライフスタイル提案商社・豊島株式会社が展開する2種類の独自素材です。ひとつは、日本国内の海岸などに漂着したペットボトルなどを原料とした繊維のアップドリフト®、もうひとつは、未活用状態、または規格外の野菜などから抽出した成分を染料として再活用したフードテキスタイルです。『THE NORTH FACE』がこのふたつの素材に惹かれたのは、単に環境配慮型素材というだけでなく、ロングライフなものづくりが身近な気づきから生まれた素材である点に、ブランドの思想と深い共鳴を感じたからです。
THE NORTH FACE 飯島(以下TNF)
アップドリフト®の出発点は、豊島の社員の方が趣味のサーフィンのために訪れた石垣島で目にした海洋ごみだったそうですね
豊島株式会社 谷村(以下豊島)
石垣島といえば有名な観光地のきれいな海というイメージですよね。こんな現実があるのかとショックを受けた社員が会社に共有し、ビーチクリーンアップの活動を2019年にスタートさせたんです。少人数から始めましたが、今では島ぐるみの活動へとひろがっています
TNF
私たちもアウトドアを主軸に事業を展開する会社として、各所でビーチクリーンアップなどの活動をしていたので、豊島さんの活動に強く共感し、石垣島での活動に参加させていただきました
豊島
この活動を継続するなかで直面したのが、石垣島には焼却炉がなく、回収したペットボトルをはじめとする海洋ごみを、土に埋めて処分せざるを得ないという現実です。埋める土地には限りがあり、環境への負荷も大きい──。そこで、拾うだけで終わらせず、素材として生かす道はないかという発想から、アップドリフト®が生まれました
フードテキスタイルは、アパレル業界の大量生産、大量消費、大量廃棄が問題視されていた2010年代半ば、食品ロスの問題に目を向けて行動に移したのが谷村さんでした。
豊島
興味をもったきっかけは私の子どもの食べ残しからでした。飲食店や食品メーカーとの交流によって、食品業界でも食品の大量廃棄という、アパレル業界と同じ問題が起こっていることを知りました。廃棄されるものを利用できないかと考えて着目したのが、日本に古くからある草木染めでした。日本古来の染色技法をベースに、染料成分を安定的に管理し、量産可能なかたちへ落とし込む技術を構築して、現在、約50種類の食材から500色以上を生み出せるまでになり、世界でも類を見ない染色プロジェクトへと成長しました
TNF
海洋ゴミや食品ロスといった課題は、どこか遠くのだれかの問題ではなく、私たちの生活のすぐそばにある問題です。自分が直面した課題を解決するために行動に移す姿勢に、アウトドアブランドであるわたしたちと同じ問題意識を共有していると感じたんです
日本の地域課題の解決を発端とした開発経緯や、長年の地域貢献活動による気づき、生産者をはじめとした原料調達先との関係といったストーリーと、ブランドの求める高い理想に応える技術力によって誕生したドリフトダイ。『THE NORTH FACE』では、このドリフトダイをJAPAN COLLECTIONを象徴する素材のひとつとして位置づけました。JAPAN COLLECTIONの目標である、日本の自然環境と生活や文化に根ざした素材を使って、アウトドアブランドとしての機能性を追求し、ロングライフな日常着をつくる、というテーマを具現化するうえで、ドリフトダイはぴったりのパートナーだったのです。
アップドリフト®は、回収した海洋ごみを分別・洗浄し、ペレット化したのち、製品へと加工する。ペットボトルなどを、4つの工程でアップサイクルしている。
ドリフトダイの魅力のひとつが、自然由来の染料から生まれた3色のカラーバリエーションです。フードテキスタイルが展開する500色以上もの豊富なラインナップは、ひとつの食材から10色以上の染料を抽出できることや、トーンの異なる染料で染めた綿をブレンドし奥行きのある色合いの糸をつくることで実現しています。
TNF
豊富なカラーバリエーションの中から、JAPAN COLLECTIONにふさわしい色として私たちが選定したのは、日常に溶け込むこと、長く着たくなること、という視点でした。ドリフトダイに採用した染料の原料は、赤かぶ、しょうが、センブリです。日常で気負わず着られるスウェットやTシャツを前提にしていたので、長く着続けられる定番色でありながら、ほどよい個性を併せ持つ色選びを意識しました。赤かぶ由来のライトグレーは普遍性のあるトーンで、柔らかい印象。しょうがやセンブリは、自然光のもとで微妙に表情が変わる豊かなニュアンスを持っています。
また、豊島の高いトレーサビリティもフードテキスタイルの大きな強みでした。
TNF
JAPAN COLLECTIONと銘打って開発するうえでは、日本のどこからきた原料を採用しているのかが明確であることは大事な要素でした。その高いトレーサビリティによって、日本国内で調達した原料を、どのようなプロセスで染料へと変化したのかというストーリーを商品の付加価値として語ることができるんです
豊島
赤かぶは長野県の生産者から、しょうがは徳島県の生産者から、センブリは奈良県の老舗和漢薬会社から仕入れています。仕入れ先が明確であることは、フードテキスタイルの大きな強みです。国内で調達した原料だから日本の風土を感じられる色を生み出せるという点に加えて、輸送コストを抑えられるというメリットもあります
ドリフトダイは、パーカ、クルーネックのスウェットシャツ、ショートスリーブとロングスリーブのTシャツの4型を展開しています。どれも日常で出番の多いベーシックなアイテムだからこそ「長く着たいと思えるかどうか」を最優先に開発しました。
TNF
一般的に、再生繊維やアップサイクル素材は環境負荷や機能性に優れる一方で、耐久性が弱点となることがあります。JAPAN COLLECTIONが掲げるロングライフなものづくりを実現するためには、この課題を丁寧に乗り越える必要がありました。当初、ボディ素材としては扱いやすくコストの低いポリエステルも検討されていましたが、最終的に選んだのはコットンでした。自然由来の染料との相性、肌ざわり、経年変化の美しさなど、長く使うための条件を満たしていたためです。一方で、アップドリフト®によって再生されたポリエステルも適所で使用し、環境への配慮と機能性の両立も図っています
フードテキスタイルに使用される染料は、未活用状態・規格外の野菜などを原料としていますが、決して安価というわけではありません。安定した染色を実現するためには高度な技術と手間が必要で、一般的な染料よりもコストがかかる場合もあります。
それでも『THE NORTH FACE』は、この素材が持つ可能性に価値を感じ、JAPAN COLLECTIONに採用しました。世界的なアウトドアブランドが選ぶことにより、アップドリフト®やフードテキスタイルの可能性を広げ、捨てられるはずだったものに新たな価値を与えることにもつながります。
技術とアイデア、そして日本ならではのもったいない精神によって、長く寄り添う一着へと生まれ変わる。ドリフトダイは、そのプロセスそのものが物語であり、手に取るたびにその物語に思いを馳せたくなるアイテムなのです。
──私たちは、商品を売るのではなく、思い出やストーリーを売っています。それが商品以上の価値を生むのであれば、成功だと考えています。
飯島氏の言葉にあった『THE NORTH FACE』の理念は、JAPAN COLLECTIONの開発にも生かされていました。
『THE NORTH FACE』アパレル事業部MDとして、主にライフスタイルウェア部門を担当。商品の需要予測や在庫管理、全国各地の工場視察など、ブランド運営にまつわる幅広い業務に携わる。
繊維を中心に取り扱うライフスタイル提案商社・豊島株式会社の営業企画室に所属。フードテキスタイル事業のプロジェクトリーダーで、アップドリフト®️の開発にも携わる。




