2025.03.13
信頼のおける品質と物量の多さで、「ヴィンテージ天国」と言われている日本。レアで貴重なアーカイブを求めて、世界中から大勢の人々が集まっています。そしてラグジュアリーブランドの旗艦店がずらりと並ぶ街、東京・表参道には、脇道を入った一角に優良なヴィンテージショップが集まる「夢の世界」があるんです。
photo / 髙橋義雄 / PIXTA(ピクスタ)
まず『表参道」という街について、あらためて知っておきましょう。今やメゾンブランドの旗艦店が集まる通りとなっていますが、もとは1920年、明治神宮への参道として創建された道でした。
1946年に在日米軍施設『ワシントンハイツ』(現在は『表参道ヒルズ』が建っている)が造られてから、この地域にはアメリカ人向けの商業店舗が増加。当時珍しかった輸入品などが手に入れられると、表参道周辺は感度が高い人々が集う街へと発展していきました。
その後原宿をカルチャーの街に押し上げたのが、1958年に建設された『セントラルアパート』(現在は『東急プラザ表参道原宿』が建っている)。国内のクリエイターたちが事務所を構えたり、俳優や文化人が1階の喫茶店に集うようになり、表参道周辺はさらに魅力を強めていきます。
そして1978年、表参道に隣接する原宿に、若者向けのファッションビル『ラフォーレ原宿」がオープン。当時の日本のインディーズブランドブームを巻き起こし、90年代には裏原系、2000年代には原宿カワイイ系など、さまざまなファッション文化が隆盛。原宿は世界中の人が知る「ストリートファッションの聖地」となっていきます。
一方で表参道には、2002年に『ルイ・ヴィトン』が旗艦店をオープン。以降、他のラグジュアリーブランドも続々と進出したことで、表参道はラグジュアリーストリートとなりました。
ストリート色の強い原宿と、ハイソサエティな表参道。日本のヴィンテージ業界を牽引する『AMORE Vintage Aoyama』は、このエリアに目をつけて出店を決めます。
「私たちは、ヴィンテージアイテムを多くの人に身近に感じてほしい、という思いから始まったお店。ストリートやカジュアルが好きな人もいれば、ラグジュアリーブランドのきらびやかな世界が好きな人もいる……。多様なファッション好きが行き来するこのエリアなら、よりたくさんの人に来てもらえるんじゃないかと思ったんです」(『AMORE Vintage Aoyama』・板倉さん)
狙い通り、『AMORE Vintage Aoyama』は大盛況。その後、神宮前5丁目には続々とヴィンテージショップがオープンし、このエリアはヴィンテージを求める人々にとっての楽園となっていきました。
現在(2025年時点)の表参道。ラグジュアリーブランドの店舗がけやき通りに並んでいる。
『AMORE Vintage Aoyama』
なぜ、日本はヴィンテージ天国と言われるのでしょうか?
その理由は「圧倒的な量の多さ」と、「品質の良さ」です。
物量が多いのには、1980年代後半から1990年代初頭にかけて起こったバブル経済が関係しています。当時は、多くの人が高級なブランド品を購入できる経済的余裕を持った時代。若い女性を中心に、ブランド品を持つことはステータスシンボルとなっていきました。
特に『シャネル』、『ルイ・ヴィトン』、『エルメス』などが爆発的に売れ、世界的に見ても日本は大きな市場のひとつに。流通の少ないアイテムが日本に集中したことから、現在までマニアが求めるレアヴィンテージが豊富に残っているのです。
そして日本のヴィンテージが海外から評価されている最大のポイントは、その「状態の良さ」。バッグ、ウェア、ジュエリー、どんなアイテムであっても、傷やシミが少なく、中には新品同様の状態のものも!
「ここまで状態がいいものが多いのは、“物を大切に扱う”という日本人特有の気質によるところが大きいと思います。使ったあとはしっかりお手入れして箱に戻すとか、子供や孫の世代に引き継ぐという習慣、文化が関係しているのではないでしょうか」(『VINTAGE QOO TOKYO』・HYEJUさん)
さらに商品の仕入れは、古物商しか入れないオークションを中心に、目利きのバイヤーたちが何重にもチェックし、真贋を見極めた上でおこなっているため、安心して買い物ができる「信頼感」も、日本ならでは。
「お客様には仕入れのプロセスをしっかり説明するようにしていますが、それでも真贋が気になるのであれば、ブランドに修理依頼をしてみてはどうか、と提案しています。それで万が一ブランドから修理を拒否されたら、それは本物ではないということになりますからね。私たちは、それほどの自信を持って商品を販売しています」(『VINTAGE QOO TOKYO』・HYEJUさん)
『ALLU OMOTESANDO』には、ロレックスの時計とともに本物を証明するギャランティーカードがディスプレイされている。
『VINTAGE QOO TOKYO』
「限定もの」「希少なもの」「非売品」など、マニアにとってはたまらないものに出会える表参道のヴィンテージショップは、まるでブランドアーカイブの博物館。ショッピングだけでなく、貴重なアイテムの数々を通して、ラグジュアリーブランドの歴史を知ったり、その時代背景を感じることもできます。
2024年リエディションで話題のルイ・ヴィトン×村上 隆氏コラボ。2009年のコレクションで、世界で150体限定で生産された幻のぬいぐるみがここに! 3,980,000円/AMORE Vintage Aoyama
映画『プラダを着た悪魔』でアン・ハサウェイが着用して注目を集めたシャネルのジャケット。裏地と同じ柄のインナー、スカーフもついた3点セット。 1,537,800円/VINTAGE QOO TOKYO
超希少なクロコダイルを使用したエルメスの最高峰、「幻のバーキン」と名高い“ヒマラヤ”。流通数が非常に少ないので、出会ったときが買いどき!17,996,000円/ALLU OMOTESANDO
マニア心をくすぐる雑貨も豊富。(左)『ルイ・ヴィトン』が顧客に送ったと言われる非売品の飛行機模型。33,000円(右)ポップコーンバスケット型のレザーの小物入れ。154,000円/ALLU OMOTESANDO
定番人気のシャネルのマトラッセ。皮の表面に細かな凹凸がついた「キャビアスキン」で、ゴールド金具、かつここまでの美品は実に希少。2,167,000円/ALLU OMOTESANDO
表参道のヴィンテージショップは、どのお店も店構えが豪華で、広々した空間にお店のテーマに沿って揃えられたインテリア、商品棚、店内に漂うアロマなど隅々までこだわり抜かれています。
まるでセレブのドレスルームに遊びに来たような気分になりながら、贅沢な買い物「体験」ができるのも、楽しみのひとつです。
たとえば、天井から巨大なシャンデリアや、メリーゴーランドをイメージした大型什器のある『VINTAGE QOO TOKYO』、モロッカンなインテリアでまとめられた『AMORE Vintage Aoyama』、『ALLU OMOTESANDO』には、大きな革張りのソファーが置かれた応接室のようなスペースも。
また、どの店舗も季節によってディスプレイを変えているため、何度来ても新鮮な気持ちで楽しめます。来日の度に訪れるリピーター客が多のも納得です。
豊富な品揃えと、贅沢な空間演出で訪れる人々を魅了している表参道のヴィンテージショップ。単なるショッピングの場所ではなく、ブランドの歴史や、お店が発信する世界観を体感できるアミューズメントなスポットなんです。
どんなお宝に巡り会えるのか? そんな期待を胸に、ぜひ足を運んでください。