銀座で食べたい、日本発祥の極上卵料理・オムライスの秘密

つるんとなめらかに焼かれた卵にスプーンを入れると、ケチャップで色付けされたチキンライスが顔を出し、頬張れば、トロトロの卵とコクのある甘辛いチキンライスが口の中で混ざり合い、極上のハーモニーを奏でる。この日本発祥の卵料理・オムライスは、銀座で西洋のオムレツから発展して誕生したと言われています。卵のシンプルな美味しさを存分に味わえ、さらにライスのボリューム感で大満足できるーーそんなオムライスの魅力を、最初に生み出した銀座『煉瓦亭』で伺いました。

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オムライスは日本初の洋食屋・銀座煉瓦亭が発祥!?

明治28年、今から130年前に創業した銀座の老舗洋食屋『煉瓦亭』。「洋食屋」という呼び名は、馴染みの客がつけたあだ名で、西洋から伝わったフレンチを提供する創業当時のお店「西洋御料理店」が変化したものだったとか。今ではこういったお店を洋食屋と呼ぶのは一般的になりましたが、その呼び方が広まったきっかけになったのが、『煉瓦亭』だったのです。

そんな洋食屋の元祖・『煉瓦亭』から生まれたオムライスは、料理人が西洋料理のオムレツを練習する際に卵にライスを混ぜて焼き、まかないとして食べたのが始まり。そこから「ライスオムレツ」というメニューが生まれ、さらに進化を遂げて、現在のように卵でライスを包む「オムライス」へと変わっていったのです。このオムライスはたちまち評判となり、銀座のさまざまな店で提供されるようになりました。

入口を入ると『煉瓦亭』が描かれた絵画がお出迎え。

レトロな風貌のレジスターは昭和30年代のもの。歴史を感じさせる。

『煉瓦亭』でオムライスが誕生した明治33年当時はケチャップがまだ流通しておらず、デミグラスソースやトマトソースを使っていたそう。現代ではケチャップが主流となりましたが、『煉瓦亭』ではレシピを大きく変えることなく守り続けています。日本人にとってはどこか懐かしさを感じる味、それがオムライスなのです。

オムライスの具材にはお店独自のこだわりがある!

卵で包まれるライスはケチャップで味つけされたチキンライスが定番ですが、お店によってさまざまなこだわりが見られます。オムライス発祥の『煉瓦亭』では、みじん切りにした玉ねぎと合いびき肉を砂糖と醤油で炒めたものと、マッシュルームを具材にライスを炒めます。

醤油と砂糖の味付けはどことなく和を感じさせるのですが、このほんのり甘辛い味わいが、最後に卵の上にかけるケチャップの酸味と相性抜群で、後を引く美味しさになるとのこと。この醤油と砂糖の味付けをメインに、ケチャップは隠し味としてプラスするのが『煉瓦亭』のチキンライスの特徴なのです。

バターをひいたフライパンに、醤油と砂糖で味付けされた合いびき肉と玉ねぎ、マッシュルームを炒める。

ご飯を加えたら、隠し味の赤ワインをプラス。

よく炒めたら最後に少量のケチャップを入れ、味のポイントに。

料理長の中村さんは、オムライスを焼き続けてもう7年になるそう。

鶏肉の代わりにハムやベーコン、ソーセージを入れたり、玉ねぎのほかにもにんじんやピーマンなどの野菜を入れたり、隠し味にソースやマヨネーズを入れたり……。お店のこだわりが光るオムライスの具材に、ぜひ注目してみてください。

卵の絶妙な焼き加減は熟練シェフの腕による賜物

オムライスの主役といえば、やはり卵。ライスを包む卵をバターで焼き上げるのですが、この焼き加減に料理人の腕が光ります。あるお店では、オムライスの卵を焼けるようになるまでは3〜5年もかかると言われるほど。オムライスは料理人の技術が必要な料理なのです。

『煉瓦亭』では、なめらかにこした新鮮な卵を、LLサイズ約3つ分たっぷりと使います。弱火で火加減を見つつ、菜箸で切るようにして休まず卵を混ぜ、表面はつるんとなめらかで内側はトロトロの半熟の状態に焼き上げます。絶妙な火加減と卵を混ぜる手つき、これは熟練の料理人だからこそなせる技。

そして卵がいい感じに焼き上がったらすかさずライスを入れ、卵を包んでいきます。卵の端でライスを包んだら、フライパンをトントンと拳で叩いて揺らし、くるり。卵をひっくり返して出来上がり。フライパンひとつでワンテイクで仕上げるオムライスは、スピード感も大切なのです。

ライスを中心にのせ、卵のはしでライスをくるむ。

こぶしでトントンとフライパンを叩いて卵を端に寄せ、くるりと回転。

フライパンからお皿にひっくり返して……

ケチャップを添えれば、オムライスの完成。

表面はなめらかで内側はトロリと半熟、バターのコクを感じる卵と、ほんのり甘いチキンライス、そしてケチャップの酸味が合わさって、極上の味わいを奏でます。スプーンが止まらなくなる飽きのこない美味しさは、一度味わってもまた何度も食べたくなる味。これが定番オムライスなのです。

またオムライスは近年進化を遂げており、卵の焼き方に個性が見られるようになりました。しっかり固めに焼いたもの、半熟を超えるほどレアな焼き加減のもの、ライスを包まずに卵を上にのせるものなどなど、さまざまオムライスが生まれています。オムライス発祥の地・銀座でも、名店が軒を連ね、多種多様なオムライスに出会えます。あなた好みのオムライスをぜひ見つけてください。

Photo: Kawaharazaki Nobuki