マンガの神様たちが青春を過ごした、日本のマンガの聖地!

豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム

公式サイト
住所
東京都豊島区南長崎3-9-22
最寄駅
落合南長崎駅 徒歩5分
URL
https://tokiwasomm.jp/
支払情報
現金、各種クレジットカード等(特別企画展開催中は全館有料)
SNS
Wi-Fi
特記事項
英語版のパンフレット有り

『豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム(以下、トキワ荘マンガミュージアム)』は、『鉄腕アトム』を描いた手塚治虫をはじめとする、日本のマンガの巨匠たちが若き青春の日々を過ごした伝説のアパート『トキワ荘』を再現した文化施設です。当時のマンガ家の生活を体感できる展示や、マンガのディスプレイ・企画展を通して、マンガ・アニメ文化を次世代に発信しています。

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マンガの巨匠たちが過ごした伝説のアパート

かつて豊島区椎名町(現南長崎)にあったアパート『トキワ荘』は、1950年代から60年代にかけて、『鉄腕アトム』で知られる手塚治虫や、『天才バカボン』を描いた赤塚不二夫、『サイボーグ009』の石ノ森章太郎、『ドラえもん』の藤子・F・不二雄、『忍者ハットリくん』の藤子不二雄Ⓐといった、世界でも有名なマンガの巨匠たちが居住していました。
 
建物の老朽化によって1982年12月に解体されましたが、地域住民やマンガを愛する人たちの熱望により、2020年、跡地近くにある南長崎花咲公園内にほぼ実物大のミュージアムとして再現。館内は、残された写真や当時を知る人たちからの聞き取りを行い、細部まで当時の『トキワ荘』の姿が再現されています。
 
特別企画展開催中は全館有料となり、予約優先制ですが入館者人数に余裕がある場合は当日の入館も可能です。入館の際には、入口で靴を脱ぐため靴下の着用が必須。また、展示によっては撮影不可の場所もあるため、館内の案内をチェックしてみてください。

ミュージアムを目の前にすると、本物のアパートのような雰囲気を感じられる。

『トキワ荘』の看板は時代によって形状や書体が変化していた。この施設では四角柱とし、当時の写真を参考に2種の書体を再現。汚れやサビ具合までリアル!

『トキワ荘』があった当時は、すべての家に電話がない時代。アパートの外にある公衆電話は、マンガ家たちが出版社に連絡するときに使っていたものを色まで忠実に再現。

南長崎花咲公園の入り口に設置された記念碑「トキワ荘のヒーローたち」。『トキワ荘』には、手塚治虫、寺田ヒロオ、藤子・F・不二雄、藤子不二雄Ⓐ、鈴木伸一、森安なおや、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、水野英子、よこたとくおなど、日本の名だたるマンガ家たちが入れ替わりで住んでいた。

日本各地にある、アニメツーリズムの「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2025年版)」にも認定されている。

マンガ家たちの部屋を再現!その暮らしを垣間見る

『トキワ荘マンガミュージアム』では、当時のマンガ家たちの部屋が忠実に再現されています。特に18号室・19号室・20号室は、実際に居住していたマンガ家本人の再原図をもとに再現されており、それぞれの暮らしぶりを垣間見ることができます。本来はライバル関係にあるマンガ家たちですが、マンガの締め切り間近にはお互いの作業を助け合ったり、空いた時間には映画を一緒に観に行ったりと、絆を感じさせるエピソードも伝わっています。じっくり部屋を見ていると、当時の生活音やマンガ家たちの笑い声が聞こえてくるようです。

18号室は、石ノ森章太郎のアシスタントをしていた山内ジョージが暮らしていた部屋。途中からアシスタントが一人加わったため机が二つある。

8号室に積まれた大量の映画のフィルム缶は、大の映画好きだった石ノ森章太郎のものを再現。自室に置けなくなった映画のフィルム缶をアシスタントたちの部屋に置いていた。これらのアイテムから、石ノ森が映像表現にも強い探求心があったことが伺える。

本棚にある本も、石ノ森が自室に置けなくなったものを再現した。さまざまな本や雑誌が本棚からあふれるほど積みあがっている。

19号室は「トキワ荘」に住む唯一の女性マンガ家、水野英子の部屋。石ノ森章太郎・赤塚不二夫と合作マンガを描くために居住した。石ノ森らとよく映画を一緒に観に行っていたというエピソードも。

壁に貼られたカウボーイの絵は、黒いクレヨンで描かれていた。現在ミュージアムにある絵は、本人が当時と同じ絵を描き下ろしたもの。

水野英子は柳で編まれたスーツケース一つで上京し、たった7カ月間の滞在だった。

20号室は、赤塚不二夫とともにマンガ家を目指していたよこたとくおの部屋。食事や洗濯など、生活の面倒は赤塚の母がよこたとくおの分も見てくれていた。テレビやステレオなど、昭和時代の生活ぶりがわかるアイテムも面白い。

よこたとくおがどのような作業場でマンガを描いていたのかがリアルに伝わってくる。

マンガ家たちの部屋には、ところどころに栄養補給飲料の空瓶の姿が……。さりげないアイテムから、創作への熱意と苦労が伝わってくる。

昭和20〜30年代の日本の木造アパートをリアル体感!

築10年ほど経過した頃の『トキワ荘』をイメージして再現された建物は、昭和20~30年代の日本の木造アパートの雰囲気をリアルに感じられます。外観は当時の木造アパートそのものですが、実際はなんと鉄骨造。木造らしく見せるため、鉄骨を内壁と外壁の間に隠す形で二重構造になっています。さらに、階段が“ギシギシ”と軋む音を再現したり、炊事場やトイレの使い込まれた様子を「エイジング」という技法で表現したりと、至るところに昭和を感じさせる工夫がいっぱいです。
 
館内にはマンガ家たちのエピソードを紹介するパネルもあり、当時の暮らしぶりを知ることができます。ぜひ細部まで注目して、昭和の日本にタイムスリップしたかのような空気感を味わってみてください。

2階の展示へと続く階段は、歩くたびにギシギシと軋む。安全面に配慮しつつ、音まで当時の様子を再現された。

住人が共用で使っていた共同炊事場は生活感がたっぷり! マンガ家同士が顔を合わせればお互いのマンガの進み具合を話し合うなど、コミュニケーションの場としても使われていた。

調理台の上にあるラーメンのどんぶりは、マンガ家たちが通っていた近所の町中華『松葉』のもの。一つ一つの道具から、当時の住人たちの生活を想像できる。

ガスコンロや鍋などは各自で用意し、ガスを使うためには月ごとに料金を払っていた。『トキワ荘』のリーダー的存在だったといわれる寺田ヒロオは、仲間に「キャベツ炒め」をふるまっていたのだとか。

流し台は、洗面所や洗濯場にも使われていた。『トキワ荘』には風呂場がなかったため、夜中に水浴びをしていたマンが家もいたというから驚きだ。

男女共用で使われていたトイレは、奥の個室が大便器、手前が小便器に分かれている。

建物は二重構造で窓から外が見えないため、当時部屋から見えた風景が絵でリアルに再現されている。

マンガのディスプレイと企画展も見逃せない

1階には、『トキワ荘』ゆかりのマンガや書籍を展示しているマンガラウンジがあります。手に取って読むことはできませんが、マンガファンにとっては貴重なマンガを目の前で見られる特別な空間です。また、『トキワ荘』の解体直前に手塚治虫が直筆イラストを描いた天井板も展示されています。撮影は禁止されているため、実際に足を運んで見てみてください。さらに、1階の企画展示室ではマンガやアニメに関する展示・イベントを期間ごとに開催しているため、興味のあるイベントを狙って訪れるのもおすすめです。

写真提供:豊島区立トキワ荘マンガミュージアム

【information】

2025年8月2日(土)から11月24日(月・祝)まで、手塚治虫が作品の中で一貫して訴えてきた「生命の尊さ」や「自然の素晴らしさ」というテーマを、代表的エッセイ『ガラスの地球を救え 二十一世紀の君たちへ』の直筆原稿約110点を展示しながら紹介する企画展を開催。入館特典グッズの缶バッジにも注目!

詳しくはこちらから

マンガ作品を読むなら『トキワ荘マンガステーション』へ

『トキワ荘』に住んでいたマンガ家たちの作品に興味が湧いたら、ミュージアムからトキワ荘通りを歩いて約7分の場所にある『トキワ荘マンガステーション』に立ち寄りましょう。店内には、約6,000冊ものトキワ荘関連の書籍がずらり。手塚治虫『火の鳥』や、手塚治虫が『ジャングル大帝』などを連載していたマンガ雑誌『漫画少年』(復刻版)など、トキワ荘にまつわるマンガ家たちの作品や貴重な書籍を無料で読むことができます(利用は50分入替制)。ミュージアムでマンガ家たちの人となりと日本のマンガのルーツを知ることで、よりマンガの世界に没頭できるはず!

 

【トキワ荘マンガステーション】
東京都豊島区南長崎2-3-3

https://www.toshima-mirai.jp/tokiwaso/event/2007.html

レトロな雰囲気の『トキワ荘マンガステーション』。

作品は作家ごとに整理されている。

店内では好きなマンガを自由に読むことができる。

Photo: Satoshi Osaka / Text: Emi Inagaki

この記事の内容は2025年09月06日(公開時)の情報です