約5,000冊ものマンガに浸って過ごす神保町のカプセルホテル
本の街・神保町にある『マンガアートホテルトーキョー』は、約5,000冊ものマンガに囲まれたカプセルホテル。人気作品や話題作の英訳版、スタッフが選ぶ隠れた名作など、思わぬ一冊と出合えるのも魅力です。そんな同ホテルが提案する滞在スタイル、“漫泊”とは。マンガに浸って過ごすホテルステイの楽しみをご案内します。
マンガを読みふける“漫泊”をコンセプトにした、5,000冊ものマンガが読めるカプセルホテル『マンガアートホテルトーキョー』。漫画と宿泊をかけあわせた“漫泊(MANPAKU)”とは、ただ泊まってマンガを読むのではなく「マンガに浸る滞在」のこと。あえて一般的なホテルではなくカプセルホテルにしたのも、マンガ以外の楽しみや心地よさを取り除くことで、作品にどっぷり浸ってもらいたいという狙いがあります。
マンガの本以外、余計なものがいっさいないこの空間、マンガ好きにとってはまさにオアシス。中央に広めの導線を作り、本棚と客室を区切らないことで、マンガの世界に没入できる造りになっています。
そもそも同ホテルが生まれたのは、マンガ好きなオーナーの「マンガを読むことが仕事になればいいのに」という思いつきから。理想の仕事環境を作るにはどうすればいいか? と考えるうちに、こちらを経営するに至ったそう。マンガ好きによるマンガ好きのための『マンガアートホテルトーキョー』。ホテルステイでは重視されるべき快適さを逆手に取った発想は、マンガファンのツボにハマり、国内外の評判を呼ぶようになりました。
“漫泊”というコンセプトは、ホテルの内装にも反映されています。館内はミュージアム(美術館)をテーマに、マンガが映えるホワイトで統一。客室は本棚と一体化し、マンガに囲まれた穴蔵のような造りとなりました。1.8畳の客室内は、至ってシンプル。この、家でごろ寝しているようなリラックス感がマンガを読みふけるには最高なんです。外に手を伸ばせば本棚に手が届く距離感も、ここならではの心地よさ。
マンガ好きなスタッフの個性が光る、ユニークな棚作りもおもしろいところ。レイアウトは1週間に1度ペースで変えているといい、スタッフ一人一人が内容を自由に決める“持ち棚”方式なのだとか。棚ごとのテーマ設定やそれに伴う作品のセレクトは、担当するスタッフにお任せ。「グルメ」「猫」など、それぞれが好きなものや日常生活で興味を持ったテーマが反映されています。このほか、新作や映画化された話題作をまとめた棚や、海外からのゲストも多いことから、落語などの日本文化をテーマにした作品も多数。
こちらには、マンガを「広義のアートとして捉える」というもう一つのテーマがあります。マンガはいち娯楽ではなく、日本を代表するカルチャー。すなわち「消費するものではなく、アートのように継がれていくもの」という考えから、こうしたテーマに辿りついたそう。マンガに囲まれた空間、手を動かして読む時間、スタッフの温度感が伝わるレイアウトなど、マンガの世界に浸れるさまざまな仕掛けによって、意識せずとも文化としてのマンガを体感できるのが、実は一番の醍醐味なのかもしれません。ここでの滞在は、不思議と忘れられない時間になるはずです。
松本大洋作『Sunny』が目を引く棚。「装丁やイラストに惹かれて手に取ったら、思いのほかおもしろかった」という人も多いそう。
荒木飛呂彦作『ジョジョの奇妙な冒険』の函装版は、誰もが知る人気作品というのはもちろん、表紙のイラストに惹かれて手に取る外国からのゲストも多いのだとか。
この記事の内容は2025年08月19日(公開時)の情報です