日本アニメの歴史と魅力が知れる、アニメのランドマークへ

アニメ東京ステーション

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特記事項
英語、その他言語での接客対応/営業時間:11~19時(最終入場18時45分※企画展示は18時30分)/休日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始、臨時休館あり

東京都が策定した長期ビジョンに沿って開館した、池袋の「アニメ東京ステーション」。アニメ文化の保存・継承を目的に誕生し、その魅力を国内外に発信しています。貴重な資料をもとにした制作工程の紹介や、人気作の特別企画展が無料で見られるのも嬉しいところ。深く楽しく、アニメを知ることができる“聖地”です。

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日本が誇るアニメ文化の継承と存続のために生まれた施設

多くの“聖地”が点在する「池袋」に誕生した「アニメ東京ステーション」は、日本が誇るアニメの魅力を国内外に発信する拠点、いわばアニメのランドマークです。東京都が初めて手がけたアニメ関連施設でもあり、長らく培われてきたアニメ産業の継承と発展を掲げ、2023年にオープンしました。セルアニメーション時代の貴重な資料を活用した制作工程の紹介や、最新の人気作にフォーカスした特別企画展など、さまざまな視点でアニメの魅力を紹介しています。

施設は地下1階から2階までの3フロア。総合情報プラットフォームである1階では、120作品を超える人気アニメで構成されたシンボルオブジェが出迎えてくれます。

同施設が開館した背景には、昨今のデジタル化があります。デジタル化が進むにつれて、アニメ制作に携わる各社は膨大な紙資料の保管に悩まされていた。こうした状況を受け、2003年に日本のアニメ関連会社が約8割集まる東京都が動きました。一般社団法人日本動画協会とタッグを組み、「アニメアーカイブ事業」として各社の資料を保管する取り組みをスタート。預かった資料は約5万点にのぼり、それらを生かすべく同館のオープンが計画されたのです。

運営を担うのは、日本のアニメに関連した100社が所属する一般社団法人日本動画協会。アニメーション技術の開発や産業の発展を目的として設立された団体です。

日本の代表作にまつわる貴重な資料から制作工程を学ぶ

地下1階のARCHIVESフロアには、適切な湿度・温度管理のもとで約5万点の資料が保管されています。保管庫を背景にした常設展示では、手塚治虫作のアニメ『鉄腕アトム』の資料を活用し、セルアニメーションの制作工程を紹介。1作品における企画書から原画、セル画、アフレコ台本、最終形態のフィルムまでがそろっているのもここならではです。戦後から培われてきた日本のアニメ制作技術がいかに手間をかけ、創意工夫しながら発展してきたかをしみじみと感じられるはず。
 
ここで見据えているのは、アニメ文化の未来。アーカイブに触れながら歴史を振り返ることで、アニメ産業の発展を担う次世代に日本アニメの奥深さを感じてもらい、業界全体に興味を持ってほしいという願いも込められています。

地下1階には資料の保管庫が。「カット袋」と呼ばれる1カットごとの資料をまとめた封筒のなかには、数百枚ほどの資料が入っているそう。

企画工程のプリプロダクションから完成品に仕上げるポストプロダクションに至るまでの工程を、18段階に分けて細かく紹介しています。

各展示の説明文はQRコードをスマホで読み込むと、英語と中国語、韓国語に翻訳可能。

準備段階であるプリプロダクションは、作品の企画を考えるところからスタート。

シナリオ(脚本)を制作し、キャラクターなどの設定を決定。

それをもとに絵コンテ、いわゆる映像のざっくりとした構成を作ります。

『鉄腕アトム』ってこんな設定だったの!? と驚くポイントもあるかもしれません。

続いては、プロダクションという工程。映像の元となる何百枚もの原画、動画を描いて彩色をほどこし、それをカメラで撮影して映像を作ります。

展示されている机や絵具などもアニメーター等が実際に使っていたものなので、当時の制作現場がリアルに再現されています。

こちらは最終段階のポストプロダクション。プロダクションで作られた映像をセリフや動きのタイミング、シーンの繋がりを考えながら放送する秒数に合わせて編集したフィルムを作成(画原版)。

それに合わせて、キャラクターの声や音楽を録音(アフレコ)したフィルムを別途作成します(音原版)。最後に画原版と音原版の2つがぴったりと合うよう調整しながら、現像所で一つのフィルムに仕上げて完成です。

地下1階には定期的に入れ替わるセル画などのアーカイブ展示も。取材時は『人狼 JIN‐ROH』でしたが、これまでにも『逮捕しちゃうぞ』、『機動警察パトレイバー』などの絵コンテや設定などが展示されてきました。

見て体験して楽しむ、人気作品の特別企画展も充実の内容!

2階では、国内外で話題の人気作品を掘り下げた期間限定の展示が行われています。取り扱う作品は3ヶ月に1度ペースで変わり、これまでにTVアニメ『【推しの子】』やアニメ『ポケットモンスター』、『ラブライブ!スーパースター!!』が登場。取材時は『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』特別企画展でした。
 
特別企画展の魅力は、写真撮影スポットやスマホを通して遊べるAR体験など、体験しながら楽しめる仕掛けが満載なところ。現在は11月9日(日)まで、TVアニメ『SPY×FAMILY』特別企画展を開催中です。見て遊びながら、作品の世界観にどっぷり浸りましょう。

2階の特別企画展示室では、1作品にフォーカス。取材時に開催されていた『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』特別企画展では、キャラクターのモチーフと記念撮影できるAR撮影ゾーンや、作中の場面を再現したフォトスポットもありました。 ©創通・サンライズ

現在開催中のTVアニメ『SPY×FAMILY』特別企画展では、名シーンを振り返る場面パネルやキャラクターの等身大パネルも展示予定。 ©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

関連企画展示フロアにある、企画展で紹介している作品のグッズなどがそろうグッズストア。

カプセルトイもあります。

世界中のアニメラバーがあつまる聖地巡りの拠点

世界中から訪れるアニメファンの拠点としても評判な「アニメ東京ステーション」。各国からのゲストにもより楽しんでもらえるよう、各展示は他言語に対応しているほか、外国語で館内を案内してくれるコミュニケーターが2、3名常駐しています。アニメラバーな彼らは、英語にくわえて母国語と日本語も堪能。都内のアニメ関連施設やイベント情報にも詳しいので、館内の展示についてだけでなく聖地巡礼までサポートしてくれる心強い存在です。
 
オープン2年目の現在、来場者は約20万人を突破した「アニメ東京ステーション」。アニメファンの間で、新たな“聖地”としての存在感を強めています。

いまや来館者の3割が、外国からのゲストだそう。館内には、外国語でサポートしてくれるコミュニケーターも常駐しています。

1階には館内紹介や作品も上映するインタラクティブビジョンをはじめ、ひと息つけるテーブルも。 毎月第2・第4土曜日にはワークショップ、第3金曜日にはアニメ作品無料上映会なども開催(予約不要)。手軽なコースター作りや人気作品の上映会など、さまざまにアニメに触れられる内容です。

Photo: Akihiro Furuya / Text: Wako Kanashiro

この記事の内容は2025年08月20日(公開時)の情報です