2025.08.21
いつの時代も東京には街を代表するブランドが存在します。ストリートブランドの良さは、そうした街のムードをファッションに昇華させ、自分たちらしさを大切にしながら、DIYで面白い表現をしている点にあります。そんな2020年代を代表するストリートウェアブランド『BlackEyePatch』に注目。なぜなら2025年夏、渋谷のスクランブル交差点にポップアップストアを突如としてオープンさせてしまうという驚きを行動に出たからです。その様子を見ながら、なぜ『BlackEyePatch』が人気なのかを探っていきたいと思います。
東京発のファッションブランド、『BlackEyePatch』は、2013年にスタートしたデザイナー不明のファッションブランドです。活動開始当時は、ブランドロゴを宅配便などの送り状(伝票)にシルクスクリーンでプリントし、東京を中心とする全国各地の街中に張り巡らせる活動を行っていました。そのアイディアの背景にあるのは、グラフィティライターが自分のタグを伝票に描いてステッカーとするカルチャーであり、ブランドをDIYでPRするツールとして使用していたそうです。
そのような活動を経て、『BlackEyePatch』は謎のステッカー集団として認知されていくようになります。
ブランドのロゴデザインは“OG LABEL”と名付けられ、そのデザインがストリートから全国へ広まっていきました。最初に作られたアパレルは、このロゴをプリントしたTシャツであり、そこから本格的なアパレル製作がスタートしていきます。
『BlackEyePatch』が他ブランドと異なるのは、HIPHOPやアートなどファッション以外のカルチャーとの親和性が非常に高いという点にあります。そのアクションはブランドの活動初期から行われており、2016年、写真家の小浪次郎とコラボレーションし写真集『JIRO KONAMI: GIMATAI』を発表、アートシーンにおいても話題になりました。2017年、Amazon Fashion Weekのプログラム“AT TOKYO”に参加、渋谷の観世能楽堂跡地でショーを行うことで、ミステリアスなファッションブランドとして注目を集め、謎めいたブランドと脚光を浴びる中、2021年にはH&Mとのコラボレーションを大成功に収め、ファッションブランドとしての立ち位置を確実なものにします。
2023年からウイメンズラインの『BlackEyePatch WOMEN』をスタート。他にもG-SHOCKなどの大企業とのコラボも多数実施しています。写真家“アラーキー”こと荒木経惟さんと協業するなど、日本のブランドならではの活動を行っており、自らも「私たちは、2020年代の日本を代表するストリートウェアブランドです。」という発信を行い、渋谷や心斎橋のビルボードに、このメッセージを掲げたこともあります。
特に若年層から支持されるブランドですが、その大きな理由として、『BlackEyePatch』が現在の日本のヒップホップカルチャーとの親和性が高いことが挙げられます。千葉雄喜さんやAwichさんといった世界で活躍する日本人ラッパーとコラボレーションを行い、全国のヒップホップリスナーのユニフォーム的なブランドとして受け入れられている側面があります。アーティスト達との交友関係を丁寧に構築し、リアルな関係性を踏まえたうえでコラボレーションを実現。この日本国内のヒップホップシーンの中心にあるファッションブランドが『BlackEyePatch』です。
旗艦店、BlackEyePatch HARAJUKUで販売されていた、ラッパー千葉雄喜さんとのコラボ作。Tシャツ¥8,800
メッシュキャップ ¥7,700
『BlackEyePatch』のデザインの大きな特徴がサンプリングによるグラフィックの構築です。すでに存在するインダストリアルデザインなどをブランド流儀に昇華したデザインが多くの人を魅了します。そもそもサンプリングの文化はヒップホップシーンやストリートに連綿と続くものであり、そうしたカルチャーを感じられるのも人気の秘訣。もう1つ、デザインの特徴が、海外から見たアジア感を彷彿させるグラフィックです。例えば、アメリカのチャイナタウンにあるお土産さんに置かれていそうな物の雰囲気をプロダクトに落とし込んだり。そんなエキゾチックなアプローチが新鮮に感じられます。
アメリカで使用されているラベルにブランドのロゴを落とし込んだグラフィックを集合させたデザイン。インダストリアルな表現の一例です。
そうした個性を存分に発揮した取り組みが『BlackEyePatch TOKYO SOUVENIR SHOP』と題したポップアップストアです。2025年7月17日から8月31日までの期間、渋谷のスクランブル交差点に位置するイベントスペース、三千里跡地で開催したポップアップでは、その名の通り、<東京のスーベニアショップ>をメインコンセプトにした展開となりました。
お土産ものっぽいデザインをブランドのグラフィックに落とし込んで表現したプロダクト群はどれもシャレが効いていて存在感も抜群。1階と地下1階の2フロアにアイテムを展示。特に地下フロアの壁にはブランド名のグラフィティがブロックバスタのスタイルで大きく描かれており、ブランドらしさを表現。この立地で、こういったポップアップストアをオープンさせたのは、「東京の繁華街には意外とベタなお土産屋さんが少ない」という考え方が根底にあったのだそう。
アメリカではポピュラーなランドリーバッグでもあるチャイナバッグのチェック柄をブランドの“OG LABEL”に落とし込んだTシャツ。¥7,700
スクランブル交差点は今や、世界の人が観光に訪れる東京を代表するスポットであり、そのど真ん中にスーベニアショップを構えるということで、世界中の人がお土産を買える空間を作ろうとしたわけです。それを、ヒップホップやアートなどのカルチャーを持つファッションブランドが仕掛けているというのが、実にユニークだし他のファッションブランドには実現できないことです。
ブランドのショップは、もちろんポップアップストアだけではありません。2023年4月には原宿のとんちゃん通りに旗艦店『BlackEyePatch HARAJUKU』をオープン。その特徴はブラックの外壁に前述の“OG LABEL”のロゴ。重厚でミステリアスな雰囲気が漂うショップは、ブランドのアイデンティティを表現しています。
旗艦店、BlackEyePatch HARAJUKUに掲示されているブランドのロゴ。
他にも大阪と名古屋の中心街にも旗艦店をオープンさせていますが、ブランドの直営店は全国各地にオープンさせていく予定があるのだそう。ユースをはじめサブカルチャーを愛する人が着る、日本を代表するストリートウェアブランド『BlackEyePatch』。まだ知らない人は今すぐチェックしてください!