老舗ひしめく街・銀座で、日本の「伝統」と「今」を体感

東京には個性的な街が数多くあり、エリアごとに別世界のように感じられる場所が存在します。中でも、銀座は伝統と革新が織りなす街。老舗の名店と世界的ブランドが共存するこの街は、歩くだけで日本文化の美しさと進化を体感できる、今の東京を知るうえで絶対に外せないスポット。そんな銀座の歴史の一部と魅力、訪れるべき老舗店を紹介します。

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400年以上から成る江戸から東京へ繋がる街

メインストリートでもある銀座通り沿いには、ハイブランドのショップや『GINZA SIX』のような商業施設、日本のブランドの旗艦店が軒を連ねており、ショッピングを楽しむ街としても最高です。また、『銀座三越』や『松屋銀座』といった百貨店、100年以上の歴史を持つ文房具店の『銀座 伊東屋 本店』などもあり、その外観、内装からも東京の伝統を感じとることができます。
 
さらに大通りから1本脇道に逸れて歩いていくと、格式ある老舗の名店たちが今も変わらず暖簾を掲げています。
――――そう、東京の“今と昔”が一度に味わえる街・それが銀座なんです。

 

銀座という地名は江戸時代(1603年~1868年)にあった「銀座役所」という銀貨鋳造所が由来し、通称「銀座」として浸透していった背景があります。この時代から銀座通りとみゆき通りの交差点を中心に呉服店が集まり、賑わいを見せていました。この時代の一等地はお隣の日本橋でしたが、その近くにあったことからも繁栄していきました。「銀座」が正式な街の名前になったのは1869年(明治2年)のことでした。つまり、銀座という街には400年以上の歴史があるというわけです。
 

銀座という街の歴史と共に歩んできた、魅力ある老舗


銀座の特徴の1つとしてレンガ作りの建物が多くある印象があります。その背景にあるのが1872年(明治5年)に起きた大火災(銀座大火)を経て、焼失した銀座に作られた銀座煉瓦街です。時を同じくして、日本初の鉄道ができ、銀座は駅前商店街的な役割を果たすことになります。一気に西欧からの輸入商品が運び込まれ、街の中に洋食屋、パン屋、牛鍋屋、雑貨店などの店舗が次々にオープンしていきました。

パン屋の『銀座木村家』は1869年(明治2年)に前身となる店舗を創業し、1874年(明治7年)に銀座4丁目に店舗をオープンし「酒種あんぱん」を発明します。日本人であれば誰もが一度は食べたことのあ
る伝統あるあんぱんですが、現在も店舗で焼きたてを買うことができます。

1663年(江戸・寛文3年)に創業した『鳩居堂』。お香、書画用品、はがき、便箋・金封、和紙製品の専門店ですが、宮内庁御用達ということもあって、1880年(明治13年)に銀座4丁目交差点に東京支店として出店。1942年(昭和17年)に『東京鳩居堂』になりました。

日本の洋食の基礎を作ったレストラン『煉瓦亭』は1895年(明治28年)にオープン。ポークカツレツをはじめ、オムライスといった日本の洋食を発明していきました。ちなみに、お店の外装には、銀座煉瓦街の街並みに使われていたレンガが一部使用されています。

外装に使われている赤レンガが目を惹く『銀座菊水』。1903年(明治36年)に創業したパイプ・煙草 喫煙具専門店であり、紳士・淑女の社交場的なお店でもありました。現在もレアなパイプや喫煙具などを扱っていて、初めてパイプにチャレンジする人に対しても、スタッフがレクチャーしてくれます。

文化人が愛するカルチャーの街としての銀座

その後、銀座は繁栄を続け、新聞社や雑誌社や広告代理店などの会社ができ、流行に敏感な人が集う文化の街としても発展していきます。

そんな文化人が足繁く通っていた銀座の老舗バーが『銀座・ルパン』。1928年(昭和3年)に創業し、太宰治や坂口安吾、織田作之助といった作家や文化人たちが常連として通っていました。アニメ・漫画『文豪ストレイドッグス』にも登場し、現在は聖地的なスポットとしても有名です。

日本の民芸を次世代へ伝えようとする民藝運動の流れを汲んで、1933年(昭和8年)に『銀座たくみ』がオープン。全国の職人とコミュニケーションを取りながら、日本の工芸品を伝えるお店として運営されています。日本の日常から生まれた伝統ある品物を手に取ることができます。

ディナーにもランチにもおすすめしたいのが、1955年(昭和30年)に創業した日本料理店『ざくろ銀座店』です。東京ではじめて「しゃぶしゃぶ」を提供したお店で、オリジナルのしゃぶしゃぶ用鍋「火鍋子」を使った「しゃぶしゃぶ」を味わうことができます。店内には民芸調の落ち着いた空間が広がっており、日本らしい情緒を楽しむこともできます。

日本のお土産を探している人や、大切な人へのギフトを買いたい人は、お箸の専門店『銀座夏野』へ。3000点以上のお箸を取り扱っています。名入れ箸を使えたり、箸置きなどの小物も数多く揃っているので、きっと買いたいものが見つかるはず。

このように銀座には多くの「老舗」があり、ここ銀座ならではの個性的なお店ばかりです。

さらに銀座は日本で初めて電柱・電線を地下に移した街としても知られ、空が広く美しく見えるのも特徴のひとつ。整備された街並みは歩きやすく、散策するだけでも楽しめます。「銀ブラ(=銀座をぶらぶらと散歩する)」という言葉が昔から親しまれているように、この街は歩くことでその魅力をより深く味わえる場所。古くから続く職人の技と、現代の感性が織りなす景色。ぜひ「銀座」の魅力を五感で体感してください。

Photo: Kawaharazaki Nobuki / Edit&Text: Tajima Ryo(DMRT)