2025.03.27
ポップでありながらも毒っけのある独特なタトゥー作品が、日本はもちろんのこと世界中から支持を得ているタトゥーアーティストのTAPPEI氏。現在は東京・中目黒にタトゥースタジオ『TAPPEI ROOM』を構え、自身の作品を求める人々の肌に、日々タトゥーを刻み続けている。そしてその作品はタトゥーにとどまらず、ファッションブランドとのコラボレーションや個展制作など活動の領域を広げている。東京から世界へ飛び立つTAPPEI氏に、東京タトゥーカルチャーの今を聞いた。
TAPPEIのタトゥー作品。これまでに施術してきた人は1万人以上。はちゃめちゃなことをしているイタズラ好きな天使たちはどこか愛らしい。
現在は東京で活動されていますがご出身は?
TAPPEI
生まれも育ちも大阪で、祖父が産婦人科医だったので実家で生まれました。ちなみに両親は歯科医で、医療器具が身近にある環境で育ちました。
そのような環境の中、タトゥーに興味を持ち始めたきっかけは?
TAPPEI
小さい頃から絵を描くことが好きでした。小学生だったある時、映画で和彫りを観て、体に絵が描かれている姿を見て衝撃を受けました。「なんだ、これは!? かっこいい!」って。それからアウトローな職業が紹介されている本で、彫り師という職業と刺青というものを知って、自分もなりたいと思うようになりました。
それからどのような経緯でタトゥーアーティストに?
TAPPEI
最初はどうしたらいいかわからずで……。それなら実際に彫ってもらおうと、高校卒業の日にファーストタトゥーを入れに行きました。自分でフォトショップでデザインしたものを彫ってもらいました。その際にどんな機材を使っているのかを覚えて、海外通販で一式そろえました。当時は弟子入りという発想はなくて、とりあえず自分でやってみようって気持ちでしたね。というよりも自分でやるしかなかった。それからひたすら自分に彫っての繰り返しでしたね。
自分で自分にとは思い切った行動ですね……。
TAPPEI
今ならネットで機材のことや練習用のタトゥースキンの存在、彫り方すら調べられると思うんですけど、当時はそういった環境はなく、なんでも自分でやってみました。こうして練習しているうちに、友人から頼まれるようになりました。
なぜまた東京に上京されたのですか?
TAPPEI
当時、大阪のタトゥーの主流は和彫やトライバルだったので、自分のスタイルはあまり受け入れてもらえなかったんですよね。だったら東京に行こうと軽い気持ちで。とはいえ最初は東京でもなかなか彫る機会がなく、徐々に出会いやご縁もあってお客さんがついてきましたね。それでコロナ禍の2020年、中目黒に自分のスタジオを構えることになりました。
中目黒駅から徒歩3分。タトゥースタジオ『TAPPEI ROOM』
現在ではタトゥーアーティストとして幅広く活動されていますよね。
TAPPEI
タトゥーよりも先にグラフィックデザインを始めていたので、ファッションブランドとコラボレーションをしたり、イラストをベースに作品を展示するなど、人体以外を使った作品表現をしています。あとは2024年から友人と一緒にプライベートブランド『High Scream Center』を運営しています。こちらはグラフィックというよりも自分が着たいと思う服をゆっくり作るようにしていますね。
ファッションブランドとはどのようなコラボレーションを?
TAPPEI
『ナイキ』とは僕の作品を刻印できるNIKEエアフォース1や、セレクトSHOP『BEAMS』とは天使のキャラクターをぬいぐるみ化したり、タペックスという秒針しかない時計を作ったりと、いろいろとコラボをしてきました。『UNDERCOVER』ともやらせていただいたのは思い出深いです。これからも誰もやらないようなおもしろいコラボをやりたいと思っています。
個展ではどのような作品を発表していますか。
TAPPEI
ただ作品を発表するのではなく、ダンボールに作品を描いて展示し、購入者にはそのまま送ったり、空白の額縁の内側にタトゥーを彫ったお客さんを立たせてみたりと、いろいろ実験的なことをやってきました。これは観に来てくれた人に楽しかったなと感じてもらいたくて。テンション上がってハッピーな気持ちで帰ってもらいたいんですよね。次は韓国で展示する予定で、日本とはまたアートへの考えも違うだろうから模索しています。海外では今後もいろいろ発表したいですね。
続いて自身のタトゥーのこだわりを教えてもらえますか。
TAPPEI
タトゥーってメッセージや思い出だったり、何かしらの意味を体に残すというイメージがあると思うんですけど、僕のデザインはちょっと違くて。思いを入れることは決して悪いことではないんですけど、僕の理想としては作品を肌に所有するというか、個展に行って作品を買うような感覚でタトゥーを入れてもらえたらいいなと思っています。
デザインは、日常生活を過ごす中で思いつくデザインが多いです。例えば、洗濯機が生き物のように動いたらどうかな、本の文字が飛び出しきたらどうなるんだろうとか、身の回りにあるものがどうしたらおもしろくなるだろうかと考えています。僕が天使をモチーフとしてよく使うのは、そういったことが違和感なく自然と馴染むからなんです。天使だったら多少エグくてもユニークに見えると言いますか。
天使のキャラクターは愛らしさも感じます。どんなお客さんが多いですか?
TAPPEI
男女比で言ったらほぼ半々です。長年通ってくれている人や、個展を見てタトゥー入れに来る人もいます。ファーストタトゥーのお客さんの割合も増えてきました。
どのような流れでタトゥーは彫ってもらえるのでしょうか?_
TAPPEI
オフィシャルサイトにはLINEの予約ページがあるので、お客さんとはそこでやりとりをしていて、スタジオに来る日時やデザインのことを相談していきます。デザインに関しては、明確にこれを彫ってほしいというのがあれば応えるようにしていますが、多いオーダーはお任せですかね。僕がiPadで描き溜めているデザイン集があるので、気に入ったものを選んでもらっています。ちなみに同じ作品を彫るのは嫌なので、一度彫った作品はデザイン集から削除していますね。
今の日本のタトゥーはどんなものが主流だと思いますか。
TAPPEI
これはあくまでも主観ですが、やはり昔ながらの感じかと思います。それこそ和彫りやトラディショナルなアメリカンなタトゥーが多いはず。ただはっきり言えるのは、以前は僕のようなスタイルがほぼなかったんですが、徐々に増えてきたということ。彫る作品の選択肢が広がってきたというのは実感しています。
スタジオの壁にはTAPPEI氏がこれまでに刻んできたタトゥーの痕跡(フラッシュ)の一部が無数に貼られている
それこそ入れたいと考える人も広がっていますか?
TAPPEI
そうですね。ほんといろんな職業の方も入れるようになっていると感じています。海外の方からの依頼も増えました。特に台湾の人ですかね。英語でのやりとりも大丈夫ですので、海外の方でも気軽にメッセージください。
スキルアップもかねて自身に刻んできたタトゥーがびっしり。“KIDS”の文字は映画『キッズ』の監督であるラリー・クラークに書いてもらったサインをタトゥーに。ちなみにラリー・クラークにはTAPPEI氏のタトゥーが刻まれている
TAPPEIさんから見て東京はどんな街だと思いますか?
TAPPEI
この見た目からマイナスに見られがちですけど、東京は受け入れてくれると言いますか、否定的な方が少ないと感じています。例えば、もし大阪でスタジオを構えていたら、見た目ももっとやばくなってかもしれないし、描く絵も暗いものになっていたかもしれない。それこそブランドとのコラボレーションや作品展示をやったりするという発想にもならなかったと思います。東京だからこそ僕のタトゥーや作品は広がったのかもしれないです。
確かに東京は許容範囲が広いかもしれませんね。では最後に海外の方にメッセージを。
TAPPEI
東京の魅力はどこに行ってもいいお店があるってことですかね。渋谷や新宿のような都心から離れたエリアに行ってもおいしいご飯屋はありますし、洋服屋もある。海外に比べてエリアごとが近いので都心でなくともいろんな場所や景色を味わうことができる。東京に来ていろんな人におすすめの場所を聞くといいと思います。きっとたくさんの出会いや縁があるはず。
1993年大阪府生まれ。2015年から東京を拠点にタトゥーアーティストとして活動中。2020年に自身のアトリエ&タトゥースタジオ『TAPPEI ROOM』を中目黒にオープン。これまでにさまざまなブランドとのコラボレーションを果たし、グラフィックデザインやアートディレクション、作品制作など多岐にわたって活動を展開している。
HP:
https://www.tappeijodai.com/
Instagram: