世界のアウトドアブランドが集まる街、原宿ショップガイド

世界的アウトドアブランドの旗艦店が集まる原宿は、アウトドアを“街で楽しむ”文化が根づく稀有なエリア。明治通りからキャットストリートにかけて20店舗以上が並び、ファッションとしてのアウトドア、日本発のクラフト、限定アイテムまでを一度に体感できます。そんな原宿ならではのアウトドアカルチャーを紹介します。

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原宿はなぜアウトドアブランドの拠点になったのか

原宿のキャットストリートには『Burton』『OAKLEY』『COLUMBIA』ほか多くの旗艦店が軒を連ねる。

東京・原宿の明治通りからキャットストリートにかけての一帯は、アウトドアブランドの直営店が20店舗以上集積する、世界的にも珍しいエリアです。徒歩で回れるほどの限られた範囲に、グローバルブランドの旗艦店が数多く並び、ショッピングと街歩きを同時に楽しめる環境が整っています。

日本には神保町のような“道具としてのアウトドア”が集まる街がありますが、原宿は少し性格が異なります。ストリートファッションやカルチャーが根付くこの街では、アウトドアウェアが機能性だけでなく、日常のスタイルとして受け入れられてきました。その流れの中で、各ブランドが「ファッションの延長線上」として自らの世界観を発信する場所として、原宿を選んできたのです。

国内外で大人気の『ARC'TERYX』の日本1号店は明治通りにある。本格的な登山用のギアからトレイルランニング用のシューズまで大充実。【※2025年12月撮影】

キャットストリートにある『Burton Flagship Tokyo』には、ヴィンテージのスノーボードほか貴重なプロダクトが展示されている。

“バックパック界のロールスロイス”と称される『GREGORY』の旗艦店も明治通り沿いに。

『COLUMBIA TOKYO FLAGSHIP』は、日本最大の品揃えを誇り、過去の名品も展示。同ブランドの奥深い歴史を知ることができる。

さらに、このエリアを語る上で欠かせないのが『THE NORTH FACE』です。明治通り沿いには5店舗が並び、それぞれが異なる切り口からブランドの世界観を発信しています。
 
登山向けの専門性を打ち出す『THE NORTH FACE Mountain』、都市と自然を横断するライフスタイル提案を行う『THE NORTH FACE ALTER』、日常使いを軸にしたベーシックラインを展開する『THE NORTH FACE STANDARD』、女性視点のアウトドアスタイルを提案する『THE NORTH FACE 3(march)』、そしてランニング・アスレチックカテゴリーに特化した『THE NORTH FACE Sphere』。
 
用途ごとに明確に分かれた5つの店舗が集まる光景は、原宿が単なる販売拠点ではないことを物語っています。

登山のギアが幅広く揃う『THE NORTH FACE Mountain』。

『THE NORTH FACE ALTER』は、日常生活から軽い野外活動まで使えるアイテムが豊富。

2007年に創刊され、アウトドアカルチャーを牽引してきた雑誌『GO OUT』元編集長の竹下充さんは、原宿という街の特性について次のように語ります。

「アウトドアをファッションとして知ってもらうなら、やっぱり原宿なんですよね。登山やキャンプの街というより、まず“服の街”として認識されている場所だからこそ、アウトドアウェアも自然にファッションの延長として手に取ってもらえる。しかもこのエリアは直営店が多いので、ただ服を売るだけじゃなくて、スタッフがアイテムの背景や正しい使い方、その先の遊び方まで教えてくれるんです。着こなしの話から、実際にどんなフィールドで使うのかまで聞けるので、買い物を通してブランドの考え方や世界観に触れられる場所になっていると思います」

ファッションとアウトドアが交差する原宿は、買い物そのものがカルチャー体験になる、特別なエリアなのです。

街に溶け込むファッションとしてのアウトドアウェア

日本でアウトドアウェアがファッションとして定着してきた背景には、長い時間をかけて育まれてきた文化があります。70年代に雑誌『POPEYE』が紹介したヘビーデューティーなアメカジを起点に、ビームスやエディー・バウアーなどを通じて、海外のアウトドアウェアを「着こなし」として楽しむ感覚が広がっていきました。外から入ってきたものをそのまま消費するのではなく、独自に解釈し、組み合わせ、新しい価値へと加工していく。そうした日本的な姿勢が、アウトドアとファッションを自然に結びつけてきたのです。

この価値観は、原宿という街のファッション文化とも親和性が高く、アウトドアウェアを日常のスタイルとして受け入れてきました。機能とデザインを分け隔てなく楽しみ、人と違う着こなしを肯定する空気感が、このエリアでは自然と共有されています。

そうした日本ならではの感覚を、アウトドアウェアという分野で体現しているブランドの一つが、『and wander』です。デザイナーの2人はいずれもイッセイミヤケ出身。高いデザイン性を備えながら、実際に山でのフィールドテストを重ね、確かな機能性をもつ服づくりを続けています。アウトドアの性能とファッションの感性を無理なく両立させるその姿勢は、街で着るアウトドアウェアの一つの理想形と言えるでしょう。

一方で、海外ブランドの中でも高い支持を集めているのが、明治通り沿いに店舗を構える 『ARC'TERYX』です。極限環境での使用を前提に徹底したテストを重ねる高い機能性を持ちながら、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインで都市生活にもフィットします。中でもアーバンラインの 〈VEILANCE〉 は、アウトドアブランドの技術力をベースに、都会で着ることを前提とした洗練されたウェアとして高い完成度を誇ります。

明治通り沿いの『ARC'TERYX 原宿ブランドストア』のとなりにある『BIRD’S NEST』。クールで都会的な雰囲気が漂う店内には、ミニマルなデザインと、アークテリクスの革新的なアウトドア・プロダクトのアイデアからデザインされる〈VEILANCE〉のコレクションが販売されている。【※2025年12月撮影】

また、『COLUMBIA』 の旗艦店である 『COLUMBIA TOKYO FLAGSHIP 』で展開されている日本企画のコレクションライン〈BLACK LABEL〉もアウトドアの技術を都市生活へと落とし込んだアイテムが特徴です。動きやすさと快適性を備えたシャツとパンツのセットアップをはじめ、シャツ単体やバッグ、アウターなども展開。長時間の移動や街歩きでもストレスが少なく、きちんとした印象を保てるため、旅行中の装いとしても重宝します。

〈BLACK LABEL〉は、ビジネスシーンでも着用できるミニマルなデザインも魅力。

こうしたアイテムは、原宿に並ぶアウトドアファッションのほんの一例に過ぎません。原宿の面白さは、アウトドアウェアが一つの正解として提示されているのではなく、ブランドごとに異なる着こなしやスタイルの提案として並んでいる点にあります。日本発のブランド、世界的なトップブランド、都市向けに特化したライン。それぞれがアウトドアの機能性をどう解釈し、どんなスタイルとして提案しているのか。その違いを、短い距離を歩くだけで見比べられることこそが、原宿ならではの魅力です。

 竹下さんも、原宿を歩く体験そのものに価値があると語ります。

「原宿は、アウトドアをどうファッションに落とし込むか、その答えが一つじゃないのが面白いところなんですよね。ブランドごとに考え方が違っていて、それを店を回りながら比較できる。だからアウトドアに詳しくなくても、自分の感覚に合うスタイルを見つけやすい街だと思います」

つくりの良さで選ぶ日本生まれのアウトドアアイテム

日本のキャンプ文化をリードしてきた『Snow Peak』のアパレル部門の旗艦店も、このエリアの見どころ。ウェアだけでなく、卓越した技術で生み出された高耐久のギアも揃い、日本のシーンを一度に感じることができる。

原宿のアウトドアショップを巡っていると、細部まで妥協なく作り込まれた、日本製のアイテムに出合うことがあります。縫製や素材選び、メンテナンスまで含めて設計されている点は、アウトドアギアを単なる流行品ではなく、長く使う道具として捉える姿勢の表れと言えるでしょう。

その代表的な存在が、日本のダウンブランド 『NANGA』です。布団工場をルーツに持つブランドで、羽毛を知り尽くした技術をアウトドア用ダウンへと応用してきました。ダウン素材への強いこだわりはもちろん、 環境配慮の観点からリサイクルダウンを取り入れつつ、NANGAらしい品質管理のもとで製品づくりを行っています。

「『NANGA』は、とにかく“きちんと使い続けてほしい”という意識がはっきりしているブランドです。洗濯やメンテナンスを前提にしていて、必要であれば修理にも対応する。その姿勢から、製品そのものへの自信が伝わってきます」(竹下さん)

旗艦店である原宿店には、アパレルアイテムはもちろん、寝袋や、ブランドのルーツである布団に至るまで、全商品のラインナップが揃います。ダウン製品を実際に手に取り、素材感や縫製を確かめながら、ブランドの背景にある思想まで知ることができます。

工場をイメージした『NANGA SHOP HARAJUKU』の店内には、布団づくりの技術を生かした高品質な寝袋やダウン製品がずらりと並んでいる。

−5℃の環境下で製品を試せる冷凍フィッティングルームまである。

日本ブランドの魅力はダウンに限りません。機能素材の開発に強みを持つ『finetrack』の直営店『finetrack TOKYO BASE』では、日本の気候や登山環境を前提に設計されたウェアやレイヤリングシステムを実際に体感できます。

また、ギアやバッグを中心に展開する『UNBY GENERAL GOODS STORE』では、日本ブランドならではの丁寧なつくりのプロダクトが揃い、アウトドアと日常をつなぐアイテムに出合えます。

原宿では、こうした“日本発の機能美”を、ブランドごとに見比べながら選べることも大きな魅力です。

『UNBY GENERAL GOODS STORE』で見つけた<AS2OV>のトートバッグ。古くからアメリカで使われていたダック生地を、昔ながらのヴィンテージシャトル織機で日本国内の工場で織り上げたもの。

『finetrack』独自の撥水技術によって、かいた汗は瞬時に肌から離れ、肌をドライにキープ。汗冷えを抑えるメッシュのアンダーウェア「ドライレイヤー®ベーシック」。

日本でしか出合えない限定アイテムもチェック!

原宿のアウトドアショップを巡る楽しさの一つが、日本でしか手に入らない限定アイテムの存在です。海外発のアウトドアブランドであっても、日本市場向けに企画されたモデルや、日本独自の感性を反映したプロダクトが揃い、ファッションとアウトドアが自然に交差する原宿らしいラインナップを楽しむことができます。

その一例として挙げたいのが、バックパックの名門ブランド 『GREGORY』です。

「『GREGORY』は、デイパックに代表される普遍的なデザインで知られる一方、日本では素材やカラー、柄使いを工夫した日本企画のモデルも展開されています。アパレルブランドとのコラボレーションにも積極的で、アウトドア由来の機能性をベースにしながら、街でのスタイリングを意識したデザインのバッグも多くリリースされていますね」(竹下さん)

『GREGORY 原宿』で見つけたデニムブランド〈NEEDBY heritage〉とのコラボアイテム。ヴィンテージデニムを思わせながら、軽量で耐久性に優れたポリエステル素材を採用。

花柄モチーフのブラックタペストリー柄は、日本限定品。

訪日観光客にとっては、日本ならではのアウトドアアイテムをお土産として選ぶのもおすすめです。アウトドア用のフードやドリンク、日本語ロゴがあしらわれたウェアなどは、実用性がありながら話題性も高く、旅の記憶を持ち帰るアイテムとしても適しています。

『Burton Flagship Tokyo』で目を引いた東京タワーのモノクロTシャツ。

原宿アウトドアショップ巡りの魅力は、明治通りからキャットストリート周辺の店を、気の向くままに歩いて回れることにあります。原宿から渋谷方面へ向かって歩けば、大小合わせて数多くのアウトドアショップが点在し、気になる店に次々と立ち寄ることができます。円安の今は価格面でも魅力的。街歩きを楽しみながら、自分の感覚にしっくりくるアイテムを見つけてみてください。

PROFILE

竹下 充

2007年『GO OUT』創刊編集長に就任。2022年にはゴルフ版GO OUTの『GOLF OUT』を創刊。現在は『GO OUT』統括プロデューサーとして、野外イベント『GO OUT CAMP』『GO OUT JAMBOREE』、オンラインサイト『GO OUT Online』、WEBメディア『GO OUT WEB』、韓国版の『GO OUT KOREA』も刊行し、雑誌以外にもコンテンツを広げる。
HP:https://web.goout.jp

Photo: Dan Noguchi、Yuma Yoshitsugu、Satoshi Osaka、Wacci / Edit&Text: Hajime Sasa(Rhino)