東京の20代クリエイター集団が作る カルチャーマガジン『COMET MAGAZINE』

『COMET MAGAZINE』は、東京拠点に活動する気鋭アーティストYAMEPI©︎が所属するクルー、COMETによるカルチャーマガジン。所属しているメンバーは、全員が東京を拠点に活動しており、年齢は2000年以降生まれの20代前半。編集作業からデザイン、印刷、販売といったメディアの運営をすべてDIYで手掛けており、彼らの視点で切り取った東京の今を紹介する内容が掲載されています。そんな、『COMET MAGZINE』について、編集するメンバーの思いを踏まえながら紹介。

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クルーは学生時代からクリエイティヴな活動を共にする仲間

COMETは、前述のアーティスト、YAMEPI©を中心に、共に制作を行うクリエイターであり双子の弟、TAKERU、彫刻家・造形師のJUJIRO、フォトグラファーのKOUSEI、そこに、最近クルー入りを果たしたRIN SAITOがメディアの営業やアパレル製作等の業務を受け持つ。どういう経緯で集まって雑誌を作ることになったのでしょうか。

COMETの成り立ちについて教えてください。

YAMEPI©

初期メンバーの4人が出会ったのは大学在籍中です。当時、コロナ禍だったので授業もリモートだったんですけど、SNSを介して気が合いそうな奴と繋がっていったのが始まりです。その後、在学中から4人でクリエイティブしていたんですけど、ずっと一緒に活動していたこともあって、いっそチームとして動いた方が強いだろうし、より良いものを生み出せるんじゃないかと思って声をかけました。それが2023年10月頃です。俺の初個展(2023年10月20日~29日に、渋谷のStudio 4Nで開催された『YAMEPI©001』)が終わった頃でした。

それでは、メンバー各々の活動や『COMET MAGAZINE』で行っていることについて教えてください。

YAMEPI©

自分はアーティストとして活動をしていて、さっき話した初個展のとき、運営している会社にインターンでいたのがRIN SAITOです。その個展後に一緒に遊ぶようになって、ブランドをやりたいって相談を自分にしてきたんですよ。今から1人で立ち上げるのも大変だと思ったので、じゃあCOMETで一緒にやろうよって誘ったんです。

RIN SAITO

今は他に仕事もやりながら、メディアの窓口として連絡を取ったり、プロジェクトの調整を行ったりしています。あとは、自分ができる範囲で、TAKERUがほぼ1人でやっている『COMET MAGAZINE』の作業をお手伝いしています。文字起こしだとか。

TAKERU

俺はグラフィックデザイナーとして活動していて、フライヤーやパッケージデザインもやったりしています。『COMET MAGAZINE』では編集長を務めていて、撮影以外のほぼすべてを担当しています。実際に取材しに行ってインタビューしてライティングを行い、デザインをしています。デザイナーは仲の良い、Ryo Taniguchiという先輩が1人手伝ってくれている状況です。ちなみに撮影はフォトグラファーのKOSEIがほぼすべて担当してくれています。

YAMEPI©

全体的な雑誌の進め方とアートディレクションを自分の方で考えて、こんな風にしたいんだけどってことをTAKERUに伝えるということをしていますね。大変な作業は全部TAKERUに任せっきりというか(笑)。

JUJIRO

普段、彫刻家・造形師として活動しているので、雑誌作りには深く関われていないんですけど、COMETとしてフィギュアなどの立体を作るときは自分が担当しています。最近は3Dプリンターの練習を進めているところですね。その他、他アーティストとの繋がりも多いので、取材の際には自分から声掛けをしたりしています。

ちなみに、クルー名は由来は何ですか?

YAMEPI©

星がすごく好きだったこともあって、それにちなんだ名前を考えている中で、フランス語の“コメット”という言葉は名前としても可愛らしいし星が使えると思ったんですよ。それに、フランス語に<彗星に図面を引く(できもしないことを企てる)>という言い回しがあって、それが自分たちにぴったりだと思ったんです。

真ん中・アーティストYAMEPI©、後列右・TAKERU、後列左・JUJIRO、、手前右・RIN SAITO、手前左・フォトグラファーKOUSEIの5人のメンバーが所属するCOMETクルー。

東京レペゼンで世界と戦えるカッコいい同世代を掲載

デジタルネイティヴの皆さんが、なぜまた雑誌を作ろうと考えたんですか? 『COMET MAGAZINE』では、他のメディアに登場しないクリエイターやアーティストのインタビューが数多く掲載されていますが、どんな内容を掲載しようと考えているんですか?

YAMEPI©

もともと雑誌を読むのが好きだったし、自分たちでメディアを持つことの面白さや強みを考えたときに、やってみたいと考えたんです。それで、俺が『TAKERUなら雑誌を作れるよね』って話をして、実際にそれが出来たのだからすごいことだと思います。

TAKERU

編集や雑誌のレイアウトを作った経験はなかったんですけど、最初に雑誌作りの話をされたときに、自分ならできるっていう自信がありましたね。ただ、実際にやってみたらすごく大変でした(笑)。

『COMET MAGAZINE』では、他のメディアに登場しないクリエイターやアーティストのインタビューが数多く掲載されていますが、どんな内容を掲載しようと考えているんですか?

YAMEPI©

俺らと同世代で、東京で活動しているクリエイターやアーティストたちを中心に掲載しようと考えています。ストリートに限らず東京のカルチャーを盛り上げようとしている同世代を、世代問わず世界中の人に紹介したいと思ったのも、雑誌をスタートさせたきっかけだったんです。

東京を世界に紹介したいという考えが雑誌のコンセプトとしてあるということですね?

TAKERU

そうですね。今後、英語版を作る予定があって、世界水準の面白くてカッコいい東京のカルチャーを『COMET MAGAZINE』が世界に発信していきたいと考えています。

『COMET MAGAZINE』誌面。ファッションからインタビュー、読み物ページまで、コンテンツの幅が広く、デザインも多様。

3号目となる『COMET MAGAZINE ISSUE 03 FALL WINTER 』はアートにフォーカスした特集が掲載されています。企画については、どのように決めているんですか?

YAMEPI©

自分とTAKERUで何をするのかを考えて、最初は大きなテーマを決めたうえで、進行しながらアイディアを付け足していくような感じで毎号進行しています。

 

TAKERU

特に創刊号は何もわからずに勢いだけでやっていた感じなので、改めて今見るとありえないレイアウトもあるんですけど、まずは当初の目標でった、自分たちと同世代の人を取材して掲載することができたので、結果的によいものができたと思っています。

YAMEPI©

3号目のアート特集に関しては、自分たちが好きで憧れているアーティストをインタビューして回ったので、とにかく早く出来上がった雑誌を読みたいという気持ちが強いです。作り手側もそう思えるので、『COMET MAGAZINE』がめちゃくちゃアツい雑誌だと思いますね。

取材対象を決める際に、自分たちが好きで注目している人、ということ以外に重視しているものはありますか?

YAMEPI©

俺たちが考える“東京を代表する人”というのは基準としてあるかもしれません。若い世代であれば、世界で戦っていけるクリエイティビティを持っている人だったり、東京レペゼンで世界を目指して活動している人などですね。上の世代で取材させていただいた方々は、すで世界で大活躍している人も多くいます。フィーリングが合って、東京らしいと感じる人が多いです。

インタビューページが多いのも特徴。取材相手はコメットが「東京らしい」と感じる人。

90~00年代に発行されていた日本の雑誌にインスパイア

 『COMET MAGAZINE』が行なっているのは、今の東京にあるユースの姿を世界へ発信していくこと。そのような編集方針を掲げているのは、自分たちが東京で生み出しているカルチャーが世界的に見てもカッコいいと考えているから。一方で、『COMET MAGAZINE』の手段、つまりレイアウトに関しては、90~00年代のファッション誌、カルチャーマガジン然とした空気感がある。実際に雑誌を作るにあたってのバックボーンはどこにあるのでしょうか?

YAMEPI©

俺たちが大好きな雑誌は90~00年代に発行されていた『relax』です。当時の裏原カルチャーに対する憧れが強くあって、その情報を仕入れるためにバックナンバーを集めていたんですが、そのうちに雑誌の面白さにハマっていったんです。そこから『EYESCREAM』なども集めるようになっていきました。

TAKERU

「あと、昔の雑誌はレイアウトがカッコいいです。デザイン的な面で『COMET MAGAZINE』が参考にしている部分は大きいですね。『STUDIO VOICE』もデザインがカッコいいと思うんですけど、真似したくてもなかなか雑誌に落とし込めないという(笑)。そういう面白みがあります」

デザインだけではなく、『COMET MAGAZINE』の巻頭特集や連載、細かな内容を考えるにあたって参考にしたことはありますか?

YAMEPI©

『relax』を読んでいて特に感じるのは、どんなことでも取り扱っていて掲載しているということです。フードから格闘技、スポーツ、音楽まで。そういう多様なカルチャーが感じられるのが魅力的ですし、何でも編集するという精神を見習って『COMET MAGAZINE』に反映させたいと思いましたね 。

TAKERU

特に文章は変に気取りすぎないようにしようってことを『relax』から学びました。なので、『COMET MAGAZINE』で原稿を書く際には読者と同じフラットな視点で語って、空気感を一緒に作り上げていくのが大事なのかなと考えています。

今の時代だからこそ、フィジカルで記録することが重要

では、COMETにとっての東京らしさとはどういうことだと思いますか?

YAMEPI©

東京にはいろんなカルチャーが集まっていて、カオスが生まれているじゃないですか。それを綺麗に自分のものにできている人に東京らしさを感じるかもしれません。

TAKERU

そうだね。いろんなカルチャーを編集しまくっているという、編集能力の高い人が東京らしいと思います。それは着ている洋服を見ても思いますね。その組み合わせで、そんなにカッコよくなるんだって驚くようなことをするのが東京っぽいと感じます。

JUJIRO

俺は地元が東京なんですけど、そんな自分からすると地方から東京へ来て何かを表現しようとしている人のエネルギーがすごいと感じますね。そういう人が東京を盛り上げようとしていること自体が東京らしいと思います。

RIN SAITO

自分のスタイルを持った人が大勢いて、各々独立して活動することで、さまざまなカルチャーが生まれているところに、自分が憧れた東京の姿があると感じます。

NYやLA、ロンドンや香港、ソウルなど世界中の大都市と比較して、東京の特徴はどういう点にあると思いますか?

YAMEPI©

ファッションが1番イケている街だと思います。ストリートファッションもあればモード系のスタイルもあって、全部がここまで豊富に揃っていて、それがファッションカルチャーとして1つに混じり合っているのは他にない魅力じゃないかと思います。

振り返ってみると、雑誌発売の度に開催されているポップアップは大盛況。世代問わず多くの人が雑誌を手にしていて、大きな反響が見られました。この状況についてどう思っていますか?

YAMEPI©

自分たちの中でも根拠のない自信はあったものの、多少なりと不安はあったんですよ。でも、結局やってみたら多くの人が手にしてくれて喜んでくれる雑誌になりました。そこで、やっぱりフィジカルのものはめちゃくちゃ重要なんだって再認識できました。SNSでは10年前の出来事がパッと出てくるわけではないですし、ネットが中心の現代だからこそ、今の時代をフィジカルで残しておくことが重要になっていくと体感しています。それに、10年後に自分たちの時代をフィジカルで見返せるものがあるのって、すごくいいことですから。

雑誌発売にあわせてポップアップを開催。

これからの話を教えてください。今後、『COMET MAGAZINE』で特集したいことはありますか?

YAMEPI©

次は2000年生まれ以降のクリエイターを特集する企画をやりたいってことを話し合っているんですよ。表紙には、出演してくれる人たちのクルーカットを掲載したいと考えています。それを10年後に見たら面白いんじゃないかなって考えていますね

では、クルーとしてやりたいことは何ですか?

YAMEPI©

今はCOMETにとって雑誌作りがメインの活動になっているんですけど、やりたいけど実現できていないことがたくさんあるんですよ。今、『TUNE』や『FRUiTS』のようなスナップマガジンを作っていて、イベントをCIRCUS TOKYOで行おうと考えているんです。そのスナップマガジンも定期的に発行してイベントとセットでやっていこうと企画しています。

TAKERU

あとはブランドにも力を入れていく予定です

YAMEPI©

もともと、TAKERUとは『JAM CLUB』というブランドをやっていて、そこでカタログを製作していたのが雑誌作りという発想のピニュエル原点にもなったんですけど、今後は新たにブランドを立ち上げてアパレルに限らずライフスタイルに関するプロダクトを発信していきたいと考えているので、そちらにも注目していただければ。

2020年代の東京ユースが発信するクールな活動を記録するカルチャーマガジン『COMET MAGAZINE』。東京の今の姿を知りたい人に読んでいただきたい。国内限定だが、下記、WEBサイトから購入することができるのでチェックを。

PROFILE

COMET MAGAZINE

2001年生まれのメンバーで構成されるクリエイティブクルーCOMETが刊行するカルチャーマガジン。年に4冊の発行を軸に不定期で発行されている。2024年12月現在で3号が発売中。バックナンバーを含め、BASEから入手可能。 

Online Shop: https://cometmag.base.shop/

Photo: Ura Masashi / Edit&Text : Tajima Ryo(DMRT)