日本の夏を体感。風情溢れる東京の「夏祭り」と「伝統行事」

東京の各所で開かれる夏祭りや伝統行事。そこには、日本の歴史や文化、人々の暮らしが色濃く息づいています。神輿や山車、盆踊り、縁日屋台などが街をにぎわせ、人々は浴衣姿で夏の夜を楽しみます。古くから五穀豊穣や無病息災を願う神事として始まり、祝祭や鎮魂の場として受け継がれてきましたが、今では観光客も参加できるイベントとしても注目されています。“日本の風情”を体感できる東京の夏の醍醐味です。その代表的な夏まつりと伝統行事を紹介します。

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にぎわいと祈りが重なる、日本の夏に息づく伝統文化

東京の夏は、江戸から続く「夏祭り」や「伝統行事」がさまざまな場所で行われ、にぎやかさと静けさ、活気と祈りが同居する特別な季節。夏祭りは単なるイベントではなく、日本の長い歴史と文化に根ざした、特別な意味を持っています。もともとは五穀豊穣や無病息災を祈る神事、またお盆に祖先の霊を迎え供養する仏教行事として始まり、時代を経て地域に根づいた「まつり」や「行事」として受け継がれてきました。
 

たとえば、神輿を担いで町中を練り歩く祭りは、神様を人々のもとに迎え、地域の平和と繁栄を祈る儀式。その熱気と迫力に多くの見物客が集まります。一方、夕暮れ時に太鼓の音に合わせて踊る盆踊りは、先祖の霊を慰め、地域の人々が心をひとつにする穏やかな時間です。また、夏まつりには欠かせない縁日の屋台では、グルメや昔ながらの遊びが楽しめ、日本の庶民文化に触れることもできます。
 
そして、『隅田川とうろう流し』のように、静かに灯りを水に流して祈りを捧げる行事もあり、にぎやかさとは対照的な“日本の静けさ”を体験できるのも魅力のひとつ。風情溢れる東京の「夏まつり」と「伝統行事」は、五感で日本の夏の魅力をまるごと体感できる特別な時間です。

巨大な張りぼて飾りに圧巻! 1954年から続く『阿佐谷七夕まつり』 

毎年8月上旬、杉並区・阿佐谷パールセンター商店街を中心に開催されている『阿佐谷七夕まつり』。まだ戦後の混乱が続く最中の1954年に、復興の願いと地域活性化を目的として始まった歴史ある地域密着型の夏祭りです。今では東京を代表する、七夕祭りのひとつとなりました。全長約700メートルの商店街のアーケードに、色とりどりの大きな吹き流しや、紙と竹で作られた手作りの巨大な張りぼて飾りがずらりと並び、訪れる人々を楽しませます。
 
飾りは商店街の人々や一般応募の参加者によるもので、その時の話題となっているキャラクターや時事ネタを盛り込んだユニークな作品も多く、写真スポットとしても人気。地元グルメの屋台も充実しており、毎年約100万人もの家族連れや観光客でにぎわいます。地域の人々と訪問者が一体となって楽しめる温かいお祭りです。

カラフルな吹き流しや張りぼて飾りが天井いっぱいに揺れる、七夕まつり開催時の阿佐谷パールセンター商店街。(写真提供:中央線あるあるプロジェクト実行委員会)

『第69回阿佐谷七夕まつり』
日程/2025年8月7~11日
時間/10:00~22:00(7~10日)、10:00~21:00(11日)
会場/阿佐谷パールセンター商店街
http://www.asagaya.or.jp/

100万人が熱狂する夏の風物詩『東京高円寺阿波おどり』

杉並区高円寺で毎年8月に行われる『東京高円寺阿波おどり』は、日本の伝統的な踊りである、徳島県発祥の「阿波踊り」が楽しめる大きなお祭りです。1957年に町おこしの一端として始まり、今では2日間でおよそ100万人が訪れるほど人気の、東京を代表する一大イベントとなっています。約1万人の踊り手が色とりどりの衣装を着て、太鼓や笛のリズムに合わせて「ヤットサー」の掛け声とともに街を踊り歩く様子は圧巻です。
 
踊りのスタイルには、力強い「男踊り」と、優雅な「女踊り」があり、それぞれが魅力的。踊り手と観客の熱気が高円寺の街に広がっていく様子も見ものです。北口、南口の駅前と中央公園には「にぎわい広場」が開設され、食べ歩きも満喫できます。また『東京高円寺阿波おどり』のオリジナルグッズも販売されていたり、買い物も楽しめます。日本の伝統文化を体験しながら、高円寺の地元の人たちと一緒に盛り上がることができる、夏の特別なイベントです。

昼間は「座・高円寺」と「セシオン杉並ホール」で高円寺阿波おどり連協会連による舞台公演も行われます。

『第66回東京高円寺阿波おどり』
日程/2025年8月23、24日
時間/17:00~20:00
会場/高円寺駅南北商店街及び高南通り
https://www.koenji-awaodori.com/

水かけが名物!江戸の熱気を今に伝える『深川八幡祭』

毎年8月中旬に行われる「深川八幡祭」は、江東区にある富岡八幡宮の例祭で、江戸三大祭りのひとつに数えられる歴史のある夏祭りです。最大の見どころは、神輿に向かって沿道の観客が勢いよく水をかける「水かけ神輿」。真夏の炎天下の中、「ワッショイ、ワッシヨイ」の伝統的な掛け声とともに練り歩く担ぎ手たちに、清めと応援の意味を込めて観客が水を浴びせる一体感はこの祭りならではの光景です。
 
特に3年に一度の本祭では、大小あわせて50基以上の神輿が町を練り歩き、その迫力に圧倒されます。太鼓の音や掛け声が響き渡る中、伝統的な法被をまとった担ぎ手たちが大地を揺らすほどの気迫で一体となって進む様子は、まさに江戸の粋を今に伝える光景です。江戸の庶民文化を今に受け継ぎ、人と人をつなぐ活気ある伝統行事として、多くの見物客を魅了しています。

町を練り歩く神輿には、桶やバケツなどを使って盛大に清めの水がかけられる、3年に一度行われる本祭りで神輿が渡御している様子。各町会の御神輿50基以上が連合渡御します。

『深川八幡祭り(富岡八幡宮例祭)』 二の宮神輿渡御
日程/2025年8月17日
時間/7:00~16:00
会場/富岡八幡宮
http://www.tomiokahachimangu.or.jp/annai/maturi/maturih1.html

慰霊と平和への願いを込めた『隅田川とうろう流し』

先祖の霊を慰め、平和への願いを込めて隅田川で行われている、夏の行事『隅田川とうろう流し』。終戦の翌年から始まり、毎年夏に行われているこの行事は、かつて戦災で多くの命が失われた隅田川に灯籠を流すことで、亡くなった人をしのび、心を静かに慰めるという意味があります。しかし1966年から一時期は中止に。その後、隅田川親水テラスの設置などを行われ、川岸の再整備が進んだことを受け2005年に復活しました。
 
そして東日本大震災をきっかけに、復興や未来への願いを自由に託す七夕の短冊のような、願い事を書いて流す人も増えています。灯籠は紙でできた小さな灯りの筒で、中にろうそくを入れたもの。夕暮れ時、多くの人が自分の思いや願いを書いた灯篭を流すと、たくさんの灯籠が水面にゆっくりと浮かぶ幻想的な光景が広がります。灯篭は、購入すれば誰でも願い事を託し流すことができるので体験してみるのもおすすめ。世界中から観光客が訪れる、憩いと賑わいの場で浅草の夏の風情を感じてみてください。

隅田川にかかる吾妻橋の美しいライトアップとともに、浅草周辺の歴史的な建物や東京スカイツリーの夜景も楽しめます。

『令和7年隅田川とうろう流し』
日程/2025年8月16日
時間/18:30~20:15
会場/とうろう流し 隅田川 吾妻橋親水テラス
https://e-asakusa.jp/culture-experience/105472

『神楽坂まつり』で体感する古き良き日本の情緒と文化 

石畳の路地や風情ある町並みが残る東京・神楽坂。その夏の風物詩が『神楽坂まつり』です。毎年7月下旬に開催されるこの祭りは、地域の人々と訪れる人々が一体となって楽しめる夏の恒例行事。江戸の面影を残す神楽坂の街並みを散策しながら、祭りを楽しめます。祭りは、前半2日は「ほおずき市」、後半の2日は「阿波おどり大会」で構成され、4日間に渡り、さまざまな催しが行われています。
 
「ほおずき市」は、浅草寺の「四万六千日」という縁日で薬草としてほおずきを売っていたことに由来する、江戸時代の風習に基づいたもの。「阿波おどり大会」では、本場徳島の流れをくむ阿波おどりの迫力ある踊りが、神楽坂通りを熱気で包みます。古くからの文化と現代のにぎわいが交差する神楽坂まつりは、まさに“古き良き日本”を五感で体験できる特別な夏のひととき。粋な大人の街・神楽坂で日本の伝統と街の魅力を味わえる貴重な機会となりそうです。

歴史ある神楽坂の夏祭りは、ふたつのお祭りを一度に楽しめるので初めて日本の祭りを体験する人にもおすすめ。

『第51回神楽坂まつり』
日程/2025年8月23~26日
時間/17:00~21:00(23、24日)、19:00~21:00(25、26日)、
会場/新宿区神楽坂1丁目~神楽坂上 神楽坂通り周辺
https://www.kagurazaka.in/kagurazaka_festival/51th/

浴衣姿で夏夜の銀座を巡る祭り、『ゆかたで銀ぶら』

東京・銀座の街を、浴衣を着て楽しむイベント『ゆかたで銀ぶら』。銀座の夏夜の風情を味わえるイベントとして、2007年より開催しています。1970年に始まった「歩行者天国」の記念イベント「ホリデープロムナード」の一環としてスタートしました。銀座の中心「中央通り」が歩行者天国となり、街は和の音楽や櫓の提灯の灯りで華やかに彩られます。
 
銀座の名店が並ぶ「銀座銘店屋台」、まつり芸能集団「田楽座」の公演、浴衣で来場した方に向けた特典など、さまざまな催しがおこなわれます。また、日本の伝統文化体験コーナーでは、日本の夏を感じることができます。今年は例年よりも多くの方が楽しめるよう、開催時間を拡大。また、銀座通りに立つ一日限りの櫓で行われる「大銀座盆踊り」も見どころです。「銀ぶら」は、一説には「銀座をぶらぶら歩く」という意味の言葉。「ゆかたで銀ぶら」は、現代の東京で日本の伝統美を体験できるユニークなお祭りです。

伝統的な和装で歩く銀座の街並みは、昼も夜も特別な雰囲気。通りをゆったり歩きながら、都心の夏の夜を味わってみて。

『ゆかたで銀ぶら 2025』
日程/2025年8月2日
時間/16:00~20:00
会場/銀座通り1丁目~8丁目、各企業及び各商店・各商業施設
https://ginbura.ginza.jp/

東京の夏祭りは、日本の伝統や文化、人々のあたたかさに触れられる特別な体験です。浴衣を着て、神輿や踊り、にぎやかな屋台を楽しめば、きっと日本の夏が心に残る思い出になります。旅の思い出に、ぜひ夏祭りをくわえてみませんか?

Text: Hashimoto Izumi