2025.06.19
東京ファッションシーンの今を感じるセレクトショップ
特別なセレクトショップには、オーナーの個性や思いが隅々まで落とし込まれていて新しい価値観を提供してくれます。池ノ上の『MIN-NANO』はまさにそんなお店。東京っぽさが感じられるユースのお洒落なカルチャーの一部はここから生まれたと言っても過言ではありません。このショップがどんなところなのかを是非知ってほしいんです。
オーナーのGOROさんが『MIN-NANO』を始めたのは2009年のこと。当時は“自転車屋”で、GOROさんがピストに乗っていたこともあり、ヴィンテージのBMXや、パーツなどを取り扱っていました。その頃はアパレルは少数しか置いておらず、徐々に自身が好きなスニーカーなどを置くようになっていったのだとか。その流れで、お客さんからの反応がよかったTシャツなどを徐々に増やしていきました。
ちなみに、現在、池ノ上ではファッションアイテムを扱っており、自転車屋さんの『MINNANOCYCLINGCLUB』は2024年11月に新井薬師の方に引っ越して営業されています。
2010年代前半から半ばにかけて、日本では、アメリカのスモールスケートブランドやインディーズの気鋭ストリートブランドがファッション的なトレンドを獲得した時期がありました。『ALSTYLE』などの、ありものボディにシルクスクリーンでロゴをプリントしたシンプルなTシャツには、90年代の裏原にあったようなエネルギーが感じられ、若者のアイディアと行動力が生み出すものに、多くの人が魅了されていました。
そうしたブランドをいち早く日本に取り入れて紹介したのが『MIN-NANO』です。GOROさんがピンときたアメリカのブランドに直接コンタクトを取り、時には渡米して友人伝いに繋がりを得て扱うなどして、数多くの気鋭ブランドが並ぶようになっていきました。今でも人気のブランド『STRAY RATS』を最初に取り扱ったのも『MIN-NANO』で、当時は「ファッション的にイケている新鋭ブランドを知りたいのなら『MIN-NANO』へ行こう」というのが、ファッショニスタや業界にいる人間にとっての合言葉でした。そこでGOROさんと会話することでリアリティのある新たな知識を教わっていたわけです。
住宅街の中に佇むお店。明らかに他とは異なる洒落た空気感が感じられます。
オープン当初、『MIN-NANO』が現在の店舗の向かうにあるスペースで営業していましたが、 2020年にはその斜向かいにある建物の1階に新店舗をオープン、白を基調としたクリーンな空間の中に厳選されたアイテムが置かれています。お店として前述の背景を踏まえたうえで、今のセレクトやムード、お店の運営について、GOROさんに教えてもらいました。
「日本のブランドだと、『C.E』や『UNSEA』が多いですね。他にメインで扱っているブランドとして『Creek Angler's Device(アメリカのブランド)』や『ALWAYTH』などになります。また、『LQQK STUDIO(アメリカのブランド・プリントファクトリー。2023年からGOROさんがディレクターとしてチームに参加)』は、昔と変わらず取り扱っています。スニーカーだと『New Balance』や『NIKE』のリテーラーでもありますね。しっかりとしたブランドを置きつつ、ちょっとマニアックで、初めてみんなに紹介するようなブランドも相変わらず扱っています。今の自分のムードに近しいものをピックしつつ、スタッフや若いお客さんから教えてもらった新鋭ブランドも入れて、現在の『MIN-NANO』」のラインナップが成立しています。昔と比べると、アメリカの気鋭ブランドの取り扱いは減りましたが、今は違う形で彼らと繋がることが多いんですよ。去年は『quiet mountain(アメリカの新鋭ブランド・カフェ)』のポップアップを旧店舗があったスペースで開催したりしました。そのようにイベントなどを通じて、アメリカの次世代カルチャーを紹介したりもしています」。
同時に、『MIN-NANO』のGOROさんと言えば、数々のファッションブランドやカンパニーのクリエイティブディレクションを手掛けられていることでも知られています。例えば、『Dickies』や『NEW ERA』、前述の『LQQK STUDIO』といった、そうそうたるブランドと協業したり、『New Balance』や『ASICS』などとコラボレーションするなど、膨大なアーカイブがあります。
「そういったディレクションやコラボ、別注などのお仕事もやらせていただいていますが、最終的にはお店に返ってくればいいなと思っているんですよ。ブランドや企業のお仕事は、『MIN-NANO』の運営と比べるとオーバーグラウンドなものだと思うので、それをやることによって、お店を自由な状態でキープできるんじゃないかと考えているんです。『MIN-NANO』のディレクションについての基本的なスタンスはスタートと当時と変わらなくてすごくパーソナルなものなんですよ。何にもコントロールされることなく、全部自分でハンドリングしてやっているんですが、それを続けられるように、ディレクションなどのお仕事はきちんとやっていきたいと考えています。それに、自分を必要としてくれるのではあれば、期待に応えたいですからね」。
そのような考えの元で、GOROさんがディレクションしたプロダクトにはどこか『MIN-NANO』らしい洗練された空気感が表現されています。クリーンで洒落た風合いがあり、男女問わず着用したくなるデザインは、お店のムードとマッチしているように感じられます。
最近の客層でいくと、国外からのお客さんも増え、お店にある日本のブランドを手にすることも多いそうです。たしかに、『MIN-NANO』に置かれているブランドのプロダクトは、銀座のセレクトショップなどで扱われているケースが多く、そういった意味でも池ノ上の片隅にある小さなショップに『C.E』がたくさん置かれているのには、よい意味で違和感が感じられます。
「数年前に扱っていたようなアメリカのアンダーグラウンドな気鋭ブランドのアイテムは、時代的な状況も踏まえて減ってしまった現状があるのですが、今、『MIN-NANO』で扱っているようなブランドを置いているようなお店は同じ世田谷エリアにはおそらくないと思いますし、こんなセレクトができるショップなんだってことをお客さんにも感じてほしい気持ちはあります。僕自身、今はちゃんとしたブティックで扱われている洋服を売っていきたいというムードですし、そこにまだ知られていない面白いものをミックスさせて、ここにしかない空気を作っていきたいと思っていますね。他店でも販売されているブランドを売っていく難しさはすごくあるんですが、それができて、なおかつここにしかない強いものも提案していくという、お店としての土台作りを今はしっかりと行っていきたいと考えています」
そのようなGOROさんの考え方が120%投影されたお店だからこそ、置かれているプロダクトには特別感が感じられ、『MIN-NANO』で手にすることによる新たな価値が生まれわけです。
単純に買い物を楽しむだけではなく、お店の空気感や内装、並べられている商品から、新しい知識を得たり発見できる池ノ上のセレクトショップ『MIN-NANO』。人気の観光街、下北沢からも近いので、ここにしかない東京のカルチャーを感じに、お店を訪れてほしいです。ショップのオリジナルグッズも魅力的で、他で買えないお土産や記念品が見つかるかもしれないですよ。
ちなみに、オーナーのGOROさんは常にショップにいるわけではないので、偶然会えたらラッキーだと思ってください! そんなオーナーが信頼するスタッフに、お店に置かれているプロダクトのことを質問してみてはいかがでしょう。
この記事の内容は2025年06月19日(公開時)の情報です