古着の街で見つけた、気取らない個性派うどん店
古着店やライブハウス、小劇場、個性的な小さな店が点在し、街全体にカルチャーの気配が漂う街・下北沢。そんな街で、古着店を営む『sowhat vintage』のオーナーのふたりがおすすめしてくれたのが、うどん店『梅窓』。店主が手掛ける、茹でたてのうどんと、揚げたての天ぷら。そして、店内に流れる“うどんに似合う”音楽。気取らない佇まいながら、店主の個性が細部に光る、下北沢らしい空気をまとったうどん店です。
下北沢駅から徒歩約3分。古着店や個性的なショップが並ぶ通りの一角、『ヴィレッジヴァンガード』の真向かいに、うどん店『梅窓』はあります。昔から、音楽、演劇、古着など、さまざまなカルチャーが根づく街・下北沢。『梅窓』は、気取らずふらりと立ち寄れる店として、この街の空気に自然となじんでいます。
『梅窓』のうどんは、香川県発祥の讃岐うどんの流れをくむ、弾力のある麺が特徴。日本では、うどんの食感を語るときに「コシ」という言葉が使われます。硬さのある麺を指すと思われがちですが、本当の「コシ」は、ただ硬いだけではありません。
「中途半端に茹でるのではなく、茹で切ったうえで、麺の弾力や食感を残しています」(佐藤さん)。麺は細めながら、茹で時間は約15分。しっかり茹でることで、やわらかさの中に弾力が生まれます。噛むと心地よく押し返すような食感が、『梅窓』らしい一杯をつくっています。
『ヴィレッジヴァンガード下北沢店』の真向かいにあるビルの1階に。少し奥まった場所ですが、「うどん」と書かれた赤い暖簾が目印です。
一度に茹でる量が多すぎると茹で加減にムラが出てしまうため、なるべく注文を受けてから必要な分だけを茹でているそう。
『梅窓』でうどんと合わせて味わいたいのが、揚げたての天ぷらです。店主・佐藤さんが修行していた岡山県のうどん店『梅荘』は、もともと天ぷら店だったこともあり、うどんだけでなく、天ぷらの技術もそこで学びました。その経験は、『梅窓』の天ぷらにも生かされています。
サクサクとした軽やかな食感に仕上げるために大切なのは、揚げた後にしっかり油を切ること。表面の温度が下がると衣が油を含みやすくなるため、『梅窓』では熱いうちに油を切り、揚げたてを提供することを心がけています。天ぷらは揚げたて、麺は茹でたて。調理はすべて店主の佐藤さんが手がけています。提供まで少し時間がかかることもありますが、それは出来立てを味わってほしいという思いがあるからこそです。
薄衣でサクサクな食感です。
天ぷらはひとつひとつトングでつかみ、小刻みに振って余分な油をしっかり落とします。
『梅窓』のうどんは、一品ごとのボリュームにも配慮されており、食べ終えたときにちょうどいい満腹感を得られるように考えられています。もっと食べたい人は、天ぷらを追加でトッピングしたり、麺を大盛りにすることも可能。その日の気分やお腹の空き具合に合わせて、量や組み合わせを選べるのが魅力です。さらに、サービスでついてくる、ふた口分ほどのおこわご飯も嬉しいポイント。
「少量ですが、おこわご飯が本格的で、ひそかな楽しみなんです」(sowhat vintageオーナー・佳純さん)。おこわご飯は毎日土鍋で炊かれ、具材も日によって変わるそうです。ささやかなひと添えですが、食後の満足感をぐっと高めてくれます。こうしたさりげない心づかいが、下北沢で親しまれている理由のひとつです。
おこわご飯は、もち米を使っていて、ふっくら、モチモチとした食感です。サービスとは思えないほど本格的な味わいで、思わずおかわりしたくなる美味しさですが、数量限定のため、おかわりはできません。
この日は鯛とめかぶのおこわご飯。その日に使える食材を組み合わせてつくることも多いそうです。
その日のおこわご飯の具材は、店先の看板に掲示されています。
一番人気のメニュー「野菜天ぶっかけうどん」。さつまいも、ごぼう、ヤングコーンなど、8種の野菜がのっています。950円
人気メニューのひとつ「とり天ぶっかけうどん」。とり天は二度揚げすることで、ジューシーに仕上げているそうです。900円
『梅窓』には、うどん店でありながら、日本各地のさまざまな日本酒が揃っています。夜は23時まで営業しているため、居酒屋のように一杯飲みに訪れる人も多いのだとか。例えば、野菜天うどんを注文した場合、天ぷらはおつまみとして先に出してもらい、うどんを最後に出してもらうこともできます。日本では、お酒を飲んだ後の〆(しめ)として、ラーメンやうどんなどの麺類を食べる文化があり、『梅窓』でもそんな楽しみ方ができます。
常に10種類以上の日本酒が揃っています。
佐藤さんおすすめの日本酒は、青森県の『田酒』(左)と福島県の『楽器正宗』(右)。『田酒』は米の甘みを感じられるコクのある味わい、『楽器正宗』はフルーティーな風味で飲みやすいのが特徴です。
『梅窓』の店内には能面や屏風絵が飾られ、和の雰囲気が広がっています。そんな空間で流れているのは、音楽好きな佐藤さんと先輩が“うどんに似合う”と選曲した、おしゃれなジャズなどの音楽。さらに店内には、動物や魚などをモチーフにしたさまざまな箸置きや、演歌歌手の名前が書かれた湯呑みなど、佐藤さんが収集したユニークなアイテムも並んでいます。正統派のうどん店でありながら、店のあちこちに店主の趣味が散りばめられた、下北沢らしい個性がにじむ空間になっています。
店内はやや照明を落とした、落ち着いた雰囲気。テーブル席と、カウンター席があり、奥にはソファ席もあります。
音楽好きな佐藤さんと、佐藤さんの先輩が“うどんに似合う”と選曲した「うどんコンピ」から、その日の気分に合わせて曲を流しています。「うどんコンピ」に収録されている曲はBPM100前後のものが多く、うどんをすするテンポに近い、ゆったりとした曲が中心だそうです。「最近は自分が欲しいレコードというより、うどんコンピ用のレコードばかり買ってしまいます」(佐藤さん)。
英語版のメニューもあります。
店を開くまで、下北沢とは特に縁がなかったという佐藤さん。知人の紹介でこの場所に出会い、店を開くことになったそうです。偶然始まった場所ながら、店内に並ぶユニークなコレクションの数々には、この街の空気と通じるものがあります。
「よくふたりで行くお店です! ふたりともいつも頼むのは『とり天ぶっかけうどん』。とにかくとり天が美味しくて、お気に入りのメニューです。店主がひとりで調理しているからこそ、いつ行っても変わらない美味しさがあるのだと思います」(佳純さん)。
この記事の内容は2026年06月04日(公開時)の情報です














