日本ならではの酒文化を体験できる「角打ち」に行ってみよう

店内や店先で飲酒ができる酒店や、酒店で飲酒することを角打ちと言います。いろいろな日本酒を少量ずつ飲み比べできて、気に入ったお酒を買って帰れるのが居酒屋との大きな違いです。角打ちができる店はあまり多くはないので、初めて訪れる人は独自の決まりに戸惑うことがありますが、日本酒を満喫できる貴重な場所です。角打ちの起源や、特徴、楽しみ方を予習しましょう。

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角打ちとは酒店で酒を飲むこと

大昔、酒を樽から量り売りしていた時代、酒を買いに来た客に計量用の升を使って酒を出すようになったのが、角打ちの始まりと言われています。現代、角打ちの形態は店によってさまざまですが、主に日本酒を扱い、立ち飲みカウンターや簡易的な座席で、市販の菓子や缶詰めなどのおつまみを扱うのが一般的です。なかには、手作り惣菜や本格的なおつまみを出す店、カクテルを扱う店など、居酒屋やバーと変わらない店もありますが、一般的には、お通しや席料が必要ない、安価に楽しめる場所です。

立ち飲みの店が多いが、座って飲める店もある。

角打ちや立ち飲み店でよく見かける、ビール瓶のケースを重ねて天板を乗っけたカウンター。

おつまみは市販品か作り置き

角打ちには、居酒屋のような料理はありません。一般的には、お菓子や缶詰め、ナッツや魚介の干物といった市販品のほか、つくり置きの惣菜やおでんなどがあります。提供に時間がかからないものが定番です。

日本でおなじみの手ごろなスナック菓子をおつまみに。

ナッツや魚介の干物、燻製、珍味などを取り揃える店も。

おでんは冬のおつまみの定番。

料理や酒を客が運び、店員が酒を注ぐ

角打ちでは店員が注文を取りに来ません。客が自分で、棚や冷蔵ケースから選んだ酒瓶をレジに持っていきます。酒の説明や値段は、瓶の首に下げられた札などで確認できます。日本酒1杯の量は90mLから180mLが一般的で、店によっては、1杯の酒の量を客が選べます。店員がコップに酒を注ぎ、客が料金を支払い、酒の入ったコップや一緒に買ったおつまみを客自身が席に運びます。酒瓶や使い終わった食器を所定の位置の戻すのは、店によって、客の場合もあれば店員の場合もあります。

値札には1杯分の価格が記載されている。

客が酒瓶をレジに持っていき、店員がコップに注ぐ。

客に使い終わった食器の返却を促す注意書き。

注文するたびに支払う

居酒屋では最後にまとめて会計をしますが、角打ちでは注文ごとに会計をします。少し面倒に感じますが、角打ちは居酒屋と違って、大人数で行ったり何度も追加注文をしたりする場所ではないからです。中には、お酒の杯数や追加注文の回数に制限を設ける店もありますが、節度をもって楽しんでいる分には、何度会計しても迷惑がられることはありません。昔ながらのお店では、現金、特に小銭を用意していくと安心です。

支払い方法は現金のみの店が多いが、最近では電子マネー決済に対応する店もちらほら。

燗酒の提供方法は店によっていろいろ

冷やしても温めても美味しいのが日本酒。温度を変えて飲んでみると、風味や味わいが変化するのを感じられます。お燗のしかたは店によってさまざまで、注文すると店員がやってくれる店、客が燗銅壺(かんどうこ)という湯煎道具を自由に使ってつくる店、客に電気式のヒーターを貸し出す店などがあります。燗酒は、酒代にいくらか追加費用がかかる店もあれば、無料の店もあります。

右奥が、酒を湯煎する燗銅壺。金属製のちろりという容器に酒を入れ、燗銅壺に張った湯につけてゆっくりと温める。

燗酒を入れる徳利という酒器に温めた酒を注いで客に提供する。

ひとり用の電気式湯煎器を貸し出す店もある。

お酒を買って持ち帰れる

飲んで気に入った酒を買って帰れるのは、角打ちの醍醐味。自分用に選ぶのはもちろんですが、大切な人へのお土産や贈り物に、自分が美味しいと思ったものを選べるのが素敵ですよね。「一番気に入った酒を買って帰ろう」と思えば、一層飲み比べに集中できます。ちなみに、角打ちだけを利用し、酒を買わずに帰ってももちろん問題ありません。

日本ならではの酒を、日本ならではのおつまみと一緒に、日本ならではの方法で堪能できる角打ち。東京はさまざまなスタイルの角打ちが存在しますが、古い町並みや下町の歴史ある角打ちで、昔ながらの日本文化を感じてみてください。

Photo : Nakagawa Jun