2020年、渋谷と原宿の真ん中に誕生したミュージックバー『不眠遊戯 ライオン』。1年中ほぼ毎日イベントを開催し大盛況です。今東京のユースがクラブミュージックを楽しむ入り口にもなっています。そんな渋谷を代表する夜遊びの中心地的なスポット『不眠遊戯 ライオン』はどんな場所なのか。そしてどんなカルチャーが生まれているのか、『ライオン』のオープン時から運営やブッキングに携わり、現在はディレクターでもある城間大輝さんに、お話を聞きました。
渋谷といえば、東京の中でもクラブなど音の遊び場が多く、90年代からクラブが盛んな街でした。数年前まで大規模なクラブが複数存在し、各地でパーティが開催され渋谷の夜を盛り上げてきた背景があります。そんな流れが変わったのが2020年のコロナ禍と、同時期に行われた渋谷の再開発に伴う人気クラブの閉店でした。
『不眠遊戯ライオン(以下、ライオン)』は2020年8月に会員制のミュージックバーとしてオープン。コロナ禍で社交場が奪われていく中で工夫をしながら営業を続け、ファッションや音楽業界で働く面々や若いクリエイター、DJ、アーティストがひっそりと通うスポットになっていきました。次第に『ライオン』のような小規模なクラブの居心地の良さ、実験的なイベントが開催しやすかったり、コミュニケーションが取りやすいという点に注目が集まり、いわゆるキャパが100~200人程度の“小バコ”がトレンドになっていきます。
今では渋谷にいくつもの小バコがあり、どこも毎夜盛り上がっていますが、そんなムーブメントの発端には『ライオン』の存在がありました。
『不眠遊戯ライオン 』ディレクター・城間大輝さん
「オープン当時は、時勢や珍しいという理由で会員制ミュージックバーを謳っていて、イベント時に開放する形を取っていました。1年ほど営業を続けるうちにイベント自体が人気になってきて、主催したい人が殺到し、イベントをメインに営業するようになっていったんです。今では大盛況というか、『ライオン』はいつも混んでいるよね、というイメージは良くも悪くもネックです」と、『ライオン』 ディレクター・城間大輝さん。
「以前は音楽系のコレクティブがあったりと、今より大きな単位でシーンが形成されていたように感じますし、大バコでのイベントが普通だったと思うんですが、最近では逆に『ライオン』くらいのキャパのミュージックバーが増えていますね。『ライオン』でイベントをオーガナイズしたいと言ってくる若い子はすごく多くて、それに伴って小さなコレクティブが増え続けているので、このくらいのサイズ感がやりやすいんだと思います」(城間さん)
日によっては300人以上が出入りすることもあるのだそう。そこには小バコが世間に浸透し、音楽シーンがさらに細分化されてきた時代的な背景もあると城間さんは感じているそうです。
『ライオン』で開催されているパーティにジャンル的な制限はないのも特徴。
「最近、強いイベントはハウスとテクノ、いわゆる四つ打ち系です。これはライオンだからではなくトレンド的な話もあります。実際に若いDJが全国的に増えてきてお客さんも増えていると感じます。もちろんヒップホップやR&Bがメインの日もありますし、お客さんはジャンルで分け隔てすることなく踊っているように感じまるす」(城間さん)
『ライオン』の入っているビルの下には『ENTER Shibuya』というクラブがあり、主にハウスやテクノがメインのパーティが開催されています。オーガナイザー同士が友人関係だったりで、イベントごとにコラボしたり、お客さんが行き来することも頻繁にあるのだそう。このビルを起点に渋谷の夜遊びを楽しむのが面白い、というわけです。
「クラブシーンはとにかく細分化が進んでいると思います。ヒップホップにしても、ドリル系しか聴かない人もいれば、90’sが好きな人もいますし、ジャンルの中でもさらに細かく枝分かれしているように感じますね。興行という意味で言えばヒップホップのマーケットは大きいですが、イベントやパーティという意味だとハウスやテクノに人が集中し、ねじれ現象が起きているのも現代ならでは。でも、細分化されてはいるものの、どんな音楽でも盛り上がるオーディエンスが多く、パーティを楽しもうとする姿勢があるのも今の東京のシーンだと感じます。流行っている『BOILER ROOM』の影響もあってか、YouTubeでのDJミックスやチャンネルが人気なのも以前と違うところかもしれないですね」(城間さん)
そんな中で『ライオン』のオープン時よりイベントを開催しているDJのCYBERHACKSYSTEMさんに『ライオン』について教えてもらいました。
「最初はミュージックバーということもあり、ゆったりするつもりで来てたんですけど、スポットとしてどんどん盛り上がり、楽しさも増す一方で(笑)。気がつけば、自分でイベントもオーガナイズするようになっていました。初めて主催したのは2021年7月の『Rave Racers Grandprix 2021』でした」(CYBERHACKSYSTEMさん)
CYBERHACKSYSTEM( DJ、Rave Racers )さん
自身が所属するクルー『Rave Racers』のイベントは毎回大盛況。DJだけではなくライブを行うこともあり、その熱狂は半端ない!
「『ライオン』は構造上バーカウンターがメインになっていて、音楽を楽しみつつ人と会話を楽しめるっていうのが好きなんです。あと立地的にも斬新でした。それまで夜は道玄坂エリアで遊ぶことが多かったんですけど、『ライオン』ができたことで平日でも原宿や表参道で働いているアパレル系の友人も来るようになりましたし、自分自身、新しいルーティンが増えたように感じます。何よりも疲れない。適度に休めて適度に遊べて、初めて連れてきた人も楽しめる、そんなちょうどよさがあるんです。実際に海外の友人を『ライオン』に連れてくることも多いですから。普段クラブ遊びをする人もそうでない人も共存できるフラットな空気感が心地よいと思います」(CYBERHACKSYSTEMさん)
居酒屋からカラオケへ、という定番の観光ルートではなく、まずは『ライオン』にくれば完結できてしまう良さがあるのも魅力で、海外の友人もすごく楽しんでいるのだとか。CYBERHACKSYSTEMさんから見て、今の渋谷の夜遊びは以前とどう変化したと感じているのでしょう。
「MIYASHITA PARKがあることで、このエリアに海外からのお客さんが増えたと感じることが多いです。原宿に行きたい人も多いでしょうし渋谷駅も近いので、『ライオン』や『ENTER』から、渋谷駅前にある『Bridge』『WREP』『Or Tokyo』だったりが周辺にあるので、夜遊ぶときの新たな導線が出来たように感じます。海外から来た人が渋谷の夜を楽しむとき、このエリアをメインにすると回遊しやすいというのもポイントでしょうね」(CYBERHACKSYSTEMさん)
いま、渋谷の夜遊びは小バコが面白い。MIYASHITA PARKを中心ぐるっと渋谷を回るように遊べばあっという間に朝になってしまうほど!
まずは、どんな日でもグッドミュージックを体験できるイベントが開催されている『ライオン』を訪れるのがベストです。