日本最大級のLGBTQ+タウンとして歴史を刻む新宿二丁目。約300m四方ほどの小さなエリアに、数多くのゲイバーやミックスバー、クラブなどがひしめき合い、週末はどこも人でいっぱいです。そんな新宿二丁目をドラァグクイーンのラビアナ・ジョローさんが案内します。
ゲイタウンとして有名な新宿二丁目の歴史は古く、ゲイバーが増え始めたのは、世間でまだ性的マイノリティに対する偏見や差別が蔓延していた時代にまで遡ります。ゲイ男性がありのままでいられる数少ない場として、また、恋愛的・性的な出会いの場として発展してきた新宿二丁目は、現在、ゲイバーやレズビアンバーだけでなく、客の性のあり方を問わないミックスバーなど、300〜400軒ものバーやクラブが立ち並び、ゲイ男性、レズビアン女性、トランスジェンダーなど、LGBTQ+のみならず、異性愛者にも開かれた街へと変容しています。性的マイノリティファーストな街ですが、リスペクトとアライシップを持っていれば、だれでも楽しめます。
2011年にオープンした『神場』は、和食をベースに世界中のスパイスを掛け合わせた創作料理が食べられる食事処。店内は和を感じられる落ち着いた雰囲気で、おひとりさまも多いそう。
「新宿二丁目でナイトアウトやパフォーマンスをする前に、友だちのダンサーやドラァグクイーンと一緒に腹ごしらえをしに来ます」(ラビアナさん)
ママの矢持さんとラビアナさん
「クィアは、周囲から好奇の目で見られないかと不安になることも多いですが、ここはとってもLGBTQ+フレンドリーなお店。アットホームな雰囲気だしママがとっても可愛いんです。ちなみに、新宿二丁目界隈ではお店のオーナーや店長のことを性別問わずママと呼ぶんですよ」(ラビアナさん)
人気メニューの「地鶏の塩からあげ メイヤーレモン」は、レモンをたっぷりかけて。裏メニューの「花ちゃんカレーは、スタッフの花さんの実家の味をそのまま再現したものだとか。
「唐揚げは柔らかくてジューシー。カレーは生卵を混ぜながら食べるとマイルドになって美味しい!」(ラビアナさん)
事前予約で注文ができるお弁当はラビアナさんも大絶賛。InstagramのDMで注文を受け付けています。
腹ごしらえをした後は新宿二丁目のメインストリート・仲通りへ。一際目立つレインボーの鳥居が目印のショットバー『アイイロカフェ』は、2025年で10周年を迎えた人気店。店内だけでなく店先でもお酒が飲める、まさにオープンな空間です。
スタッフのクリスさん。Instagramの投稿が常連客を楽しませている。
店内は決して広いわけではありませんが、近くにいる人とすぐに仲良くなれる距離感が魅力。ラビアナさんはときどき、店先でのイベントでドラァグショーを行うこともあるそうです。
「店先のテーブルで飲んでるお客さんがたくさんいて、入りやすいお店。英語を話せるスタッフもいるので、観光客も安心ですよ。週末に開催されるDJイベントも、ドリンク代だけで楽しめます」(ラビアナさん)
タレントとしても活躍するドラァグクイーンのベビー・ヴァギーさんがママを務める『バーコント』は、お酒を飲みながら、会話やカラオケを楽しめます。新宿二丁目のバーは会員制やゲイオンリーなどのように客を選ぶ店も珍しくありませんが、ここコントでは、ゲイ男性とそうでない人でチャージ料に差があるものの、だれでも入店できるので、厳密にはミックスバーに分類されます。
「オーセンティックなゲイバーで、名物ママや個性豊かなドラァグクイーンと飲めるのが最高! ヴァギーママは、みんなが想像するような誇張されたドラァグクイーンじゃなく、とっても自然体。リラックスして楽しめますよ」(ラビアナさん)
「チャージ料金は、海外から来たお客さんにとっては理解しづらいかもしれないけど、日本では、バー、スナック、飲食店などで一般的なので知っておいてほしい!」(ヴァギーさん)
ヴァギーさんの出勤日は火曜日と金曜日。他の曜日は日替わりで個性豊かなドラァグクイーンがママとしてお店に立っています。
最後にラビアナさんが、この街を楽しむために気をつけてほしいことについて話してくれました。
「この街はあくまでもクィアファーストの街。ノンケ(異性愛者)の人が来るときは『お邪魔します』という気持ちを忘れないでください。私たちが派手だからといって、何をしてもいいわけではありません。一人の人間としてリスペクトを持つことが大事です!」(ラビアナさん)
まだまだ日本では同性婚が法制化されていなかったり、性的マイノリティを守るための法律が無いのが現状です。差別や偏見が根強いからこそ、安心して楽しめるこの街を訪れる彼らの気持ちを理解し、楽しいナイトライフを送ってください。
ブラジルをルーツに持つ性教育パフォーマーで、ドラァグクイーン。 自分のセクシュアリティやジェンダーに悩んだ際に出会った性教育と、 ジェンダー規範で遊ぶドラァグのアートを組み合わせた異色の存在。トークショーやMCのほか、執筆や翻訳などの活動も。
Instagram:
@labiannajoroe